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北緯14度にあるセネガルという国に、
あの太鼓を聴きに行きたい。
作家、絲山秋子は二ヶ月の旅に出る。

セネガルは中央アフリカの西側に位置し
フランス語圏。現地語はウォルフ語。
治安が悪いため一人歩きはできず、
ガイドを雇う。
学生時代の留学で習得したフランス語を
辿々しく使いながら、徐々に土地の空気
に馴染むのを感じていく。

このエッセイは、絲山さん特有の低温の
タッチで描かれている。読んでいて心地
がいい。
アフリカの旅行記なのに、静かだ。

疲れてくるとフランス語の発音がうまく
できなくて悔しい、セネ飯は美味しくて
大好きだけれど身体が慣れなくてすぐに
お腹をこわす。いつのまにか思考回路が
フランス語になっていて、変な日本語を
使ってしまう。
いいことばかりではない。

けれど、日々冗談をいいながらガイドと
一緒に歩いたり、道端で煙草を買ったり
大勢でごはんを食べたりするうちに
少しずつ現地に友達が増えていく。
セネガル人は深い愛情に満ちていて
絲山さんの泣きポイントをついてくる。
(もちろん私も一緒に泣く)

彼女が神とあがめるアーティスト、
ドゥドゥ・ンジャエ・ローズの
太鼓演奏を流しながら読んでいた。

セネガルは一度滞在すると、どうしても
帰りたくなる場所らしい。
私も帰りたくなってしまった。
まだ一度も行っていないのに。


北緯14度 セネガルでの2ヵ月 (講談社文庫)北緯14度 セネガルでの2ヵ月 (講談社文庫)
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専業主婦の理津子は、結婚十年目の
アラフィフ。五つ歳下の夫、文麿と
小田原のマンションで二人暮らしを
しています。
寝る部屋は四年前から別、食事時には
会話のなさに困って真剣にテレビの
ニュース番組を見入ってしまう。
いわゆる倦怠期です。

理津子は思うのです。
上手く隠しているつもりなのだろうか。
夫はせっせと浮気をしているようだ…

この物語は、一組の夫婦の日々が
妻の視点でコミカルにテンポよく描かれて
います。

いつのまにか夫の一挙一動に無関心と
なってしまった理津子。
特に必要としてないし、焼きもちも
それほど感じない。
あんなに盛り上がって結婚したけれど
十年でこのありさま、これがあと三十年も
続くのって…とのっぺりとした気持ちに
なったりします。

超然としていることが妻というポジション
には似合う、と妙に納得してみたり。

女友達の、独身で自由恋愛を楽しむ
タクシー運転手であるのーちゃんに、
離婚しないの?と尋ねられます。
離婚してもどうしようもないしねぇ
と理津子は答えます。

どうしようもない?
その言葉がひっかかったまま後半を
読み進めていくと、ふたりがどんな関係
なのかがだんだん見えてきます。

いろいろひっくるめてぐるりとねじれて
三回転か四回転してから感じるじわっと
慈しむような気持ち。
耳の下の三角地帯から発する加齢臭も
愛人宅に泊まるための見え透いた嘘も
ふと家を出た自分を探す慌てぶりも
こちらの呼吸にあわせて眠る姿も。

許すも許さないも実は大したことでは
ない。
それは殊勝な妻という意味ではなく
いろんなものを含んだ大きな枠の中での
関係性という意味で。

次々とさまざまな感情が去来して混沌を
成していく。それを日常が綿棒みたいに
薄く薄く伸ばす。

感情が行動をつくり、日常をつくるのだと
ばかり思っていました。
でも、この物語の中では違う。
感情はあぶくのようなもので、どんどん
受け流されていく。

人と人とは別れたりくっついたりするほう
が全然簡単で、そのどちらでもない、
そういうんじゃない関係性をつくっていく
日常の、そして時間の堆積の偉大さを
見たような気がしたのです。


妻の超然 (新潮文庫)妻の超然 (新潮文庫)
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竹に花が咲くのは、60年か120年かに
一度らしい。
花が咲いた後の竹は一斉に枯れてしまう。

家の裏手の竹藪に咲く、稲に似た地味な
花をみて妻は、不吉ねといった。

津田は、部下の湯浅と営業でM…市に
向かいます。
列車に乗り込み、向かいあって弁当を
食べ、特に弾まない会話をぽつぽつと
しながら時間をつぶします。

さえない日常、盛り上がりに欠ける人生に
なかばうんざりしながら、一緒にいる
相手の言動に時々苛立ちながら。

車窓には見たことのない風景が続き、
なかなか目的地の駅に到着しないことを
訝しんだ二人は、聞き覚えのない駅に
降り立つのですが…

竹藪に咲く花の暗示的な言い伝え、
そしてNRという記号。

ノーリターン、戻らない。
いろんな意味に取れる言葉です。
会社に、家に、日常に、この人生に。
点滅する取扱注意の赤いランプ。

NR、と職場の行先掲示板に書いて出た
男たちが、いつのまにか運ばれた場所。

そこで男達と一緒に見た、鮮やかな色が
頭から離れないのです。
油性マジックで塗りつぶされたみたいな。

時間って本当に前だけに進むんですか?



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主人公の私は、しばらく疎遠になっていた
小学校の友人宅に招かれます。

今これに夢中になってる、と友人に
見せられたのは「強震モニタ」という
日本列島の地震の揺れをリアルタイムに
色で表示するサイトでした。
いつだって大地震の前なんだよ、
彼女はいうのです。

ふたりで向かいあって餃子を包みながら
ぽつぽつと話をします。それぞれが
歩んできた全く別の人生のこと。

友人に敷いてもらった布団の中で
私は眠れない時間を過ごします。

毎日仕事から真っ直ぐ帰ってきてずっと
強震モニタをみてる、という
昔からおたくでマイペースだった友人が
自由でうらやましい。

隣りに見栄えのいい男がいることや
雑誌に載っているような暮らしをすること
身体や肌をぴかぴかに磨くこと
Facebookでの充実している自分アピール
素敵な女とはこうあるべきという指標。
暗黙の重圧。轍の存在。

それをなぞることに価値はあったのか…

実は世間からのプレッシャーというのは
言い訳で、本当は自分が自分を縛っている
ことに主人公は苛立っている。

その気持ちがわかりすぎるほどわかって
心の中にざあっと突風が吹き荒れました。
自由になりたい。

鈍色をした解放の鍵がこの物語の中に
ある。もう一度読んだら、それを
手にできる予感がするのです。



忘れられたワルツ忘れられたワルツ
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大学生の風花が帰省した実家で、
姉はリストの忘れられたワルツを弾いた。

母は出張中で不在だった。姉はすごい
形相に似合わず優しい声で風花に告げた。
母に間男がいる、今から捕まえてくる。

消防士の父は自室にこもって外国語の
勉強をしている。もう二十カ国語目くらい
になるだろうか。

自宅の車に発生したカマドウマを捕まえて
くれと風花がいうと、水槽で飼う
ヒョウモントカゲモドキの餌にしよう
と父は嬉しそうにいう。その気味の悪い
爬虫類に、父は母の名をつけている。

テレビでしか顔をみない母、誰にも通じ
ない外国語を勉強している父、音大出身で
ピアノ教師をしている奇矯な姉。

みんな才能があるから変わってても
いいんだな。
風花がそう思うように、確かに皆個性的
だけれど、愛情に包まれた家族です。

けれど、何かがずれているのです。
別の次元が混ざりこんでいるみたいな
時計の針が狂ったような違和感。

その違和感を注意深くたどっていくと
あぶりだしのように浮き上がってくる
事実。

心の中にある収束できない混沌、
乾くことのない哀しみ、それから。

いいえ、それはカラーチェであって
かなづちではありません。

(…最近の絲山秋子はよすぎる。平伏。)



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