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二条通りを歩いていると、パン屋が
併設されたカフェにたどり着く。

お店に入る。
吹き抜けの天井は高く、ゆったりと
ソファーが置かれ、その先にはテーブル
席が続く。一番奥には中庭がある。
本棚にはびっしりと本が並んでいる。

私は中庭に近い長テーブルの席に着き
紅茶を頼んでパンを買いにいく。

夜のパン屋が好きだ。
オレンジ色の光を受けたパンたちは
つやつやと美味しそうに見える。

ブリオッシュ生地のレーズンパンと
フレンチトーストを選ぶ。

席に戻ってお茶が出てくるのを待つ。
隣では外国人の男性がノートパソコンを
開きずっと作業している。
斜め向かいには仕事帰りの男女(多分
恋人同士)が肩を寄せ合ってひそひそと
話している。

私は持ってきた文庫本、ゆずゆずりの
続きを読む。
こういう場所ではついガイドブックを
開き、先の予定を立てたくなるが
もったいないのでやめる。
私はゆったりと時間を過ごすために
ここに来たのだ。

居心地のいいカフェだ。
申し分なく内装がスタイリッシュで
でも温かみもある。

なにより距離感がいい。


 
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カウンターの席だけが壁に沿ってぐるりと
あって、背表紙を取った文庫本が並んで
いて、みんな本を読んでる。
誰も話さなくて、すごく静かなの。

ぜひ行ってみてほしい、と知人にいわれて
今、そのカフェにきている。

店の中にはごく低いボリュームで音楽が
流れている。
ひとり客ばかりで、席に着くとみな
静かに本を開いて読み始める。
ひっそりとした小さな図書館のようで
椅子を引くときの、ごと、という音に
何度か驚く。

店主は面差しのやわらかい、物静かな
男の人だ。

丁寧に淹れられたカフェオレと、バナナ
シナモントーストが運ばれてくる。

食事の後、私は並んでいる本の中から
吉田篤弘の「針がとぶ」を手に取る。
詩人だった叔母とその姪の話。
このひとの書くものは淡い、と思う。

その後、持参していた東直子のゆずゆずり
を少し読む。
熊野古道に行ってみたいとまた思う。

お店のブックカバーとカードをもらって
店を出る。

いつのまにか外は夜になっている。




 

 

 

 

 
先週テレビで偶然観た王様のブランチで
作家対談というコーナーをやっていた。
今日は後編。

作家は五名。川上未映子、中村文則、
西加奈子、和田竜、朝井リョウ。

なぜ小説を書くのか、という中学生の
質問に答えていく。
川上未映子は自分にその役目が回って
きているから、と言っていた。
西加奈子は自分が経験した感動を
物語に変換して書きたいと言っていた。
二人の本をいくつか読んでいるので
少しわかるような気がした。

朝井リョウが淡々と壮大な野心を語る中
(あっさりとした顔に似合わず)
西加奈子はニコニコ包み込むように
聴いていた。このひとかわいいな思う。
友達よりもっと親密で、あったかい。

中村文則は魔力的な小説が好きだと
いっていた。
わかるなあ…私もこれがほしい。
文章が、とか構成が、だけじゃなくて
物語に魔法をかけられる作家というのが
確かにいるのだ。角田光代とか。

彼の端正な顔立ち、静かでクレバーな
物言い、笑うとちょっと幼くなって、
でも全体を取り巻く薄い膜には孤独が
滲んでいる。

かっこよすぎる………
メディアで中村文則を観るたびに
いつも思う。
でも遠い、その遠さがいいな、とも。

見とれすぎて、彼がなぜ小説を書くのかを
聞き流してしまった。

番組が終わってから、中村文則の掏摸と
彼の推薦本、羽田圭介のメタモルフォシス
を図書館で予約する。

メタモルフォシス。
言葉の意味を調べたら、幻の水晶の
名前のようだ。



 

 

 

 

 
今夜は猫写真家のstick boyさんをお迎えし
絲山秋子氏の短篇集「忘れられたワルツ」
収録の「葬式とオーロラ」について
おしゃべりしています。

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物語の中に、試験管に入ったオーロラ、
というのが出てきますけど、
あれ、ドキドキしませんでした?


しましたよ~
主人公の男は恩師の葬儀に出席するために
真っ白な雪道をひたすら車で走る。
休憩で立ち寄ったサービスエリアで
トラック運転手の女に出会って、
そこでのやりとりが面白いんですよね。

s
そうそう。微妙にかみ合ってなくてね。
センシティブで人に立ち入られるのが
苦手な男と、ストレートに親切な女。


彼女はオーロラの装置を輸送するという
不思議な設定ですが、スタンプラリー
あるよ、とかシュウマイ美味しいよ、とか
本人自体は飾り気がなくてかわいい。

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主人公は、彼女と接している間は
ずっと心を閉ざしているのだけれど、
葬式からの帰り道、スタンプラリーの
景品「黒部和牛しゃぶしゃぶセット」が
彼女に当たるといいな、と願う。
これ、いいですよね。
愛とか平和とか大きく掲げるものより
こういう具体的な小さな祈りのほうが
純度が高いな、と。


主人公は優しいんですよね。
考えてることは投げやりだったり屈折
してるんだけど、でも芯のところは。

s
駐車場で車に積もった雪を素手で掻き
落とすとき、先生の棺の冷たさを
想ったりね。
悼む…ってこういうことなんだなって。


あのシーンは映像を観ているようでした。
ゆっくりとコマ送りの。
彼はとっても繊細。
だからこそ全部まともに受け止めてたら
きつくて、色んなことをガードしちゃうん
でしょうね。
極めつけは、
「社会というものは胸が痛むものだ」
という彼の言葉。
女性の場合、痛んでてもしょうがないから
まあいいか、と流してしまって言葉に
残らない。
それをそのままの気持ちで、そっと置いて
あるところがね。違うな、と。

s
あれ、案外ざっくりとしてるんですね笑


あっ、バレましたね
読みながら、男性の目線で見える女性の
健全さや鈍感さをみていた気がします。
それはそれでいいものだな、と。(前向き)

s

この物語って真っ白く塗りつぶされた
世界じゃないですか。
はじめから終わりまで。
その中に人間の善良さ、が浮かびあがって
くるのを感じたんですよね。


うんうん、そうですね。
小さくて、きれいな光みたいなものを
感じましたよ。
あれは善良という光だったのか…

s
光までは感知したんですね、
あと一歩です。笑


う~ん、やっぱり男性の繊細さには
かなわないですね~


忘れられたワルツ忘れられたワルツ
(2013/04/26)
絲山 秋子

商品詳細を見る



 

 

 

 

 
仕事終わり、わりと大きな書店に寄って
絲山秋子と西加奈子の本をぱらぱらと
読む。

自分のテンションは低めだったので
絲山節は同じ浸透圧ですっとしみこむ。
西加奈子は明るい。けれど日差しに
落ちる濃い影みたいな心地よさが
あるな、と思う。

高いビルの上層階にあるバーに行く。
グラスの中で、シャンパンの気泡が
細かく立ちのぼっていく。
のぞきこむように、グラスの向こうの
夜景を眺める。

店主と男性の植物化、女性化について
話をする。
知らない話がたくさんあって驚く。
それは退化なのかと考える。
多分進化なのだろう。
世界に適合するという意味では。

私は植物でも化石でもなんでもいいな
ただ美しければ。





 

 

 

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