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美術の専門学校で知り合ったふたり、
19歳の学生みるめと39歳の美術講師
ユリの二年に渡る物語。

山崎ナオコーラが描く世界は
情報量の少ない絵画のようだと思う。
小説なのでもちろん文章で書かれている
のだけど、言外の空気ごと感じなければ
その場で起こっていることをすべて理解
することができない。

さらっと読んだらああ切ないね、恋だね
で終わってしまう。
それではつまらないから、感知できる
テンションのときにしか手に取らない。
だから再読の数は少ない。
ものすごく好きな割には。

ユリは髪がぼさぼさで肉付きもよく
丸顔で目は一重で唇はかさかさだ。

でも自分のファンタジーにぴったりな
形があるわけじゃなくて、ひとを好きに
なると、そこにある形に自分の心が
くい込むのだ。

みるめはそう思っている。
そういうふうにユリのことを想っている。

ユリは自分勝手だ。だけど自分を優しい
と思っている。その上夫もいる。
全部わかっているけれど、みるめは
自分の気持ちを全然止められない。

成り行き上、みるめとユリとユリの夫の
猪熊さんと3人で夕ご飯を食べながら
ビールが湧いてくる池の話をする。
うっかりみるめは猪熊さんに好意を
持ってしまう。

山崎ナオコーラは、恋を全然スイートに
描かない。
ラッピングフリーだ。

でも、だから人の心にぐっと刺さる。


人のセックスを笑うな (河出文庫)人のセックスを笑うな (河出文庫)
(2006/10/05)
山崎 ナオコーラ

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編集者の早紀は、友人の飯岡から
高崎が消息不明になったと連絡を受ける。

飯岡は作家の高崎の恋人で、かつて
三冊の本を作るために、早紀と濃密な
時間を過ごした特別な仲間だった。

稀有な才能を持ち、けれど心臓に持病を
抱えていた高崎。

ふたりは何かあったのでは、と
不安な気持ちを抱えながら、
高崎が住む、目黒川沿いの古いアパートへ
向かうのだが…

この物語はとても短いのと、淡々として
いて盛り上がりのようなものが感じられず
でも、ぼやぁっと何かが残る。

一体何のことを書いているんだろう?
と思って二度読み返した。

誰かと関わることについて、
ポジティブもネガティブも入り混じった
ごく普通のひとの体験、が
接写のように書かれているんだな、
と思った。

過去の知り合いが、面倒な相談を
持ちかけてきたらどうするか。

積極的に関わっていくひと、または
なんとなく巻き込まれてしまうひとは
多分人間というものが好きなんだろうな
と思う。
関わりの中で生まれるなにかに、
価値を置いている気がする。

でも、それだけじゃない、
もっと大きなことが隠れていそうで
目を凝らしてみる。

なんかいやな予感がするし、今私妊婦だし
胎教に悪そうだから無理、と断るほうが
全然簡単だ。

でもあえてそれをしないという選択は、
もしかすると自分の中の何かを
磨くのかもしれない。

胸の奥でほわっと浮き沈みしている、
クリスタルみたいな球体を手にとって
そっとクロスでぬぐう。

表面にふっと色がさし、虹色に輝き出す…


さきちゃんたちの夜さきちゃんたちの夜
(2013/03/29)
よしもと ばなな

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咲の祖父母は、毎週土日になると
ことことと大量に煮込んだ豆スープを
近所のひとたちに無料で提供していた。

咲が15歳のときに両親は離婚し、
咲は母とともに父方の祖父母の家に
引き取られて暮らしはじめた。

銀座で店を構えるイタリア料理のシェフ
である父との生活は、華美で堅苦しく
小さな咲にとっては負担が重かった。

質素だけれど日々を丁寧に過ごす
善良な祖父母の元で、咲は次第に
元気を取り戻していった。

祖父母が亡くなってからも、
近所の人々からは豆スープを惜しみ、
再開を望む声が絶えなかった。
それは日々の楽しみであり、温かい心の
交流の場所でもあったから。

咲の母と、今は別の女性と暮らす父は、
自宅で一緒に豆スープの試作をはじめる…

「無料っていうのはとても残酷なこと
なんじゃないのか?」

これは咲の父がいう台詞なのだけど、
すごくわかるなあ…と思う。

豆スープのお礼として、物を置いて行く
ひとも少なからずいたようだけれど
一方的なことというのは、
非常に居心地が悪いものだと思う。

丁寧に作られた滋養たっぷりの豆スープは
ただのスープではない何かで、それを
受け取るというのはどういうことなのか。
感謝をどのような形に変換するか。
ひととしての器や力量が問われそう。

そして、父の台詞をもうひとつ。
「親が立派すぎると子供はダメになる」

うーん…と考えてしまう。
咲の父は、華やかな世界で出会った美しい
母と結婚したけれど、結局は祖母に似た
静かで地味で、内側からそっと光っている
ような女性を選んだ。

価値観というのは、実は人生の早い
段階から決まってしまうのかもしれない。
抗うことに意味はない、とは思わない
けれど。

じんわりと温かく優しい物語なのだけれど
なにか大きなものに試されているような
気持ちになったな…


さきちゃんたちの夜さきちゃんたちの夜
(2013/03/29)
よしもと ばなな

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美味しそうなもの、が読みたくなると
この本を手に取ります。

タイトルのとおり、ばななさんの日常の
ごはんについてがあれこれ書かれた
短くてぎゅっとしたエッセイ集です。

100話もあるのに、8話と71話だけを
30回くらい読んでいるなあ
と、今もまた読み返していました。

おうちキャンプについての8話では
残りご飯でバジルとチーズのおにぎりと、
梅おかかしょうゆと韓国海苔のおにぎりを
作って、あとは卵焼きとお味噌汁だけ。
家族で好きなテレビを見ながら、
手づかみでぱくぱく食べる。

この夕ご飯、美味しそう!食べたい~!
(そろそろ作ろうよ自分)

桃ときれいごとについての71話では
那須に住むお義父さんが桃をお土産に
くれるのだけど、下半分が真っ黒く
傷んでいて結局食べられなかった。
でも桃の形の優しさは受け取った…

最後をしめくくる、
人生がきれいごとだったらどんなに
いいだろう…からの文章が、
ものすごくいいんです。その世界観。
チャンネルがぴたりと合ってしまう。

ぐっと胸をえぐられたまま
雑踏の中で立ちすくむような気持ち。
半透明になった自分に、誰も気づかない。

何度も何度も読んだ、今でも。



ごはんのことばかり100話とちょっと (朝日文庫)ごはんのことばかり100話とちょっと (朝日文庫)
(2013/06/07)
よしもとばなな

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ふたり姉妹、どん子とぐり子。
彼女たちは小さな相談サイトを立ち上げ、
メールをくれる人々とやりとりするという
活動をしています。

子供の頃に両親を亡くしたふたりは
親戚を転々として大人になった経緯があり
その時期の苦労や、祖父から受けた
深い愛情をあらためてかみしめ、ひとに
役立つことをしよう、と始めたのです。

ある日、姉妹あてに届いた一通のメール。
しばらく自宅に引きこもっていたぐり子の
内面に新しい変化が起こり出すのですが…

この姉妹はまったくタイプが違って
姉は賑やかに動き回って傷の存在を散らし
ながら進むタイプで、
妹はひとりじっと内省して、傷を治して
いくタイプです。

そんな両極のふたりが描かれているので
読み手の誰しもが、何かしらのポイントで
これ私のこと書いてるよ…と
本を閉じてうな垂れる瞬間があるんじゃ
ないかと想像します。

ひとは誰しも無傷ではないんだな、
そして、おいしくてエネルギーのあるもの
を食べたり美しい景色に触れたり
好きなひとの笑顔をみたりすると
それがちゃんと心の栄養になるんだな。

そして、日々のささやかな奇跡は
ちゃんと用意されている。

彼氏との韓国旅行から帰ってきた姉が
妹に最高に楽しかった報告をしてから、
うまくいくのがこわい、と子供のように
呟くシーンがあります。

彼女の世界との向かい方を知ってからの
その一言に、ぐっと胸がつまりました。
物語の中に一瞬で吸い込まれて彼女の
気持ちを体験したみたいに、リアルに。

ばなな作品では時々そういうことが
あるんですよね。

ものすごく、ひとを観察していないと
書けない何かがあって、それは意外に
誰も言葉にしていない。
だから一定のサイクルで読みたくなる
作家なのかもしれません。



どんぐり姉妹 (新潮文庫)どんぐり姉妹 (新潮文庫)
(2013/07/27)
よしもと ばなな

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