上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 

 

 

 

 
美緒子は同じ職場の上司である与田と安定
した社内恋愛をしている。
ある週末、与田は美緒子に奇妙な告白を
する。

実は今、元妻がうちに帰ってきていて
しばらく滞在する。
君に彼女を紹介したいんだ。

その妻は十五年以上前に与田と離婚して
いるが、たまにふらりと帰ってきては
与田の家に数ヶ月滞在しているらしく、
今回で六度目だという。

美緒子は混乱して一度与田を自宅から追い
返すが、翌日、与田の家を訪れる。
彼は不在で、元妻が玄関に出てくる。
あら、美緒ちゃんね、と。

元妻、奈津はさっぱりとした女だった。
ジャグリングで生計を立て、国内外を
ひとり転々としている旅芸人だという…

この物語には孤独とは何か、その光と影に
ついてが丁寧に描かれている。
奈津は孤独のプロで、孤独の落ちこぼれ
である与田を救った。
美緒子は奈津にどんどん惹かれていく。

ひとりぼっちでいると、あざやかに自分が
いると感じる、と奈津はいう。

これすごくわかるなぁ…と思う。
誰かと一緒にいると、楽だし暖かくて
楽しいのだけど、自分の輪郭がぼやけて
くるような気がするのだ。

輪郭がくっきりしていて、ただここに在る
奈津を、泣きたいような気持ちで見つめて
いた気がする。読んでいる間ずっと。

でもこのひとは私の前からもさらりと
いなくなっちゃうんだよなぁ、と
思いながら。


愛なんて嘘愛なんて嘘
(2014/08/22)
白石 一文

商品詳細を見る
 
スポンサーサイト

 

 

 

 
いつのまにかしっくりと馴染んで、気持ちを
言葉で確かめ合うこともなく、ただ静かに
暮らし続けた相手を突然失うというのは
どれほどのことなのだろう。

主人公の果穂は、十年前につきあっていた
オサムの噂を友人のリッキーから聞く。

果穂とオサムはバイト先の西新宿のバーで
知り合って二年ばかりつきあっていたが
彼は突然失踪したのだ。

池袋のロマンス通りにある回転寿司屋の
厨房にいるらしいよ。

果穂は翌日の午後に寿司屋を訪れ、昔と
変わらぬ姿の彼をそこに見つける。
夜にまた来てくれる、上がれるから。
オサムはそう果穂に告げる。

果穂は広告代理店に勤め、グラフィック
デザイナーの昇と穏やかに暮らしている。
昇は果穂と出会った三年前から才能を開花
させ今は売れっ子だ。

一方で果穂はこの十年の間オサムの消息を
聞くたびにその地に赴き何日もかけて探し
まわった。オサムへの説明のつかない
気持ちを胸に、 果穂は指定された時間に
再び寿司屋を訪れる…

どうして自分の前から煙のようにいなく
なったのか、どうして自分はこのゆらゆら
と漂うように生きている二十も歳上の男に
とらわれ続けているのか。

その理由が持つ色彩は同じトーンだ。

育った環境も身を置く場所も全然違う、
けれど体の中に同じ音楽が流れるひと。

ふたりとも誰かを好きになると落ち込ん
じゃうタイプじゃない、
自分の相手への気持ちを信じきれないって
いうか。
リッキーの言葉が川面に浮かびあがって
は沈む。

もしかしてそういうひとと一緒にいるのは
少し哀しいことかもしれない。
それでも。



愛なんて嘘愛なんて嘘
(2014/08/22)
白石 一文

商品詳細を見る
 

 

 

 

 
染色家の知子は、売れない小説家の慎吾と
月の半分を共に暮らしている。
彼はきっちり、三日毎に妻子の家と
彼女の家を行き来する。

あるとき知子の家に男が訪ねてくる。
それは10年以上前、彼女が結婚していた頃
嵐のような恋に落ち、共に出奔した相手
凉太だった…

知子は穏やかな慎吾との生活の合間に、
凉太と激しい逢瀬を重ねるように
なります。
銭湯へ行くふりをして暗い路地を駆けて。

元々設定に無理がある中に、さらに
不自然なものを投入して、ミキサーで
がんがん攪拌したらこんなふうになる
だろうね…と遠巻きに眺めていました。

三本の糸はもつれにもつれて、
流さなくていいはずの涙が流れる。
無数の切り傷が紅く模様をつくる。

好きだけど身動きがとれないのです、
と登場人物それぞれが訴えているようで
うーん、別れるしかないね!全員!
と判決を出したくなります。

絞ったらぽたぽた水分が滴りそうなほど
湿度を含んだ日本的な情、というものが
読み手の肌にぴったりと張り付くように
丁寧に描かれています。
高密度で。

全てを投げ出してしまえる女はこわいね。



夏の終り (新潮文庫)夏の終り (新潮文庫)
(1966/11/14)
瀬戸内 寂聴

商品詳細を見る
 

 

 

*Template By-MoMo.ka* Copyright © 2017 涼虫の読書案内, all rights reserved.

涼虫(すずむし)

Author:涼虫(すずむし)

本の虫、涼虫が読書案内いたします。

本がお好きな方、読みたい本を探している
方のお役にたてると嬉しいです。
ときどき自由に書いてしまうことも
ありますが、どうぞおつきあいください。
リンクについてはご一報いただけると
幸いです。また、すべての画像、文章、
データの複製・転載をお断りいたします。

ブログランキング・にほんブログ村へ

\ランキングに参加しています/

あ行の作家 (62)
明川哲也 (1)
朝倉かすみ (1)
安部公房 (1)
伊坂幸太郎 (5)
石田千 (1)
伊藤たかみ (1)
絲山秋子 (9)
井上荒野 (9)
茨木のり子 (1)
江國香織 (14)
円城塔 (2)
小川洋子 (5)
小山田浩子 (5)
恩田陸 (7)
か行の作家 (35)
角田光代 (7)
金原ひとみ (1)
川上弘美 (14)
川上未映子 (5)
岸本佐知子 (2)
北村薫 (1)
木村紅美 (1)
窪美澄 (1)
栗田有起 (1)
小池昌代 (2)
さ行の作家 (11)
斎藤隆介 (1)
桜庭一樹 (5)
柴崎友香 (1)
島田雅彦 (2)
島本理生 (2)
白石一文 (3)
瀬戸内寂聴 (1)
た行の作家 (4)
谷川俊太郎 (2)
津村記久子 (2)
な行の作家 (18)
中上健次 (1)
中島らも (1)
中村文則 (2)
長嶋有 (8)
梨木香歩 (6)
西加奈子 (3)
能町みね子 (2)
は行の作家 (14)
林真理子 (1)
東直子 (3)
東野圭吾 (1)
平野啓一郎 (1)
藤野可織 (4)
辺見庸 (1)
穂村弘 (2)
堀江敏幸 (1)
ま行の作家 (57)
益田ミリ (1)
枡野浩一 (1)
町田康 (4)
三浦しをん (6)
みうらじゅん (1)
宮本輝 (2)
村上春樹 (30)
村上龍 (8)
本谷有希子 (1)
森絵都 (2)
森博嗣 (1)
や行の作家 (23)
山田詠美 (2)
山崎ナオコーラ (1)
山本文緒 (1)
吉田篤弘 (1)
柳美里 (1)
吉田修一 (1)
よしもとばなな (16)
未分類 (10)
ビジネス書 (20)
エッセイ・コラム (22)
コミック (7)
雑誌 (4)
涼虫の… (69)
コトノハ・リサーチ (36)
気分で、短編。 (19)
書店をめぐる (14)
読書について (50)
深海で待ち合わせ (5)
徒然 (128)
虹を渡る (17)
活字にしたい映画 (1)
スターバックスにて (12)
箱のなか★ (9)

名前:
メール:
件名:
本文:

このブログをリンクに追加する

この人とブロともになる

QR

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。