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風が冷たくなって、
月がしんと静かに輝く季節になると
この本が読みたくなります。

ひとつの家族の、秋から春にかけての物語です。

宮坂家の家族構成は、
父、母、三姉妹と末の弟。
語り手は三女、19歳のこと子です。

この家族には慎ましやかな、
けれどゆるぎない決まり事があります。

ぎんなんの皮をむく母の隣では
本を読んであげるとか。

朝ご飯はシリアルと玉子、温野菜に紅茶と
決まっていて
メニューの自由は高校卒業まで
認められないとか。

季節の行事、誕生日のお祝い。
そして子供たちが巻き起こす
ささやかな、ときどき深刻な事件の数々。

宮坂家の人々は
生真面目なのにどこかずれていて、
社会とちぐはぐだったりするけれど
輪郭がくっきりしていて魅力的。

家族というのは
ひとつの秘密の世界だと思います。
どこにも似ていない。

奇妙で、でも愛情がふんだんにあって。
うちのなかの幸福、を
覗き見ることができる一冊です。



流しのしたの骨 (新潮文庫)流しのしたの骨 (新潮文庫)
(1999/09)
江國 香織

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以前、蜂蜜パイを紹介したので
ぜひあわせて読んでほしい短編があります。

小説家である淳平は、あるパーティーで
キリエという女性と知り合います。

二人は強く引き寄せられるように
恋に落ちます。
啓示的に。

この世界のあらゆるものは
意思をもっているの。

彼女の言葉は
淳平の中にある静かな池のような場所に
石を落とします。

水面に波紋がひろがっていく。
それに導かれるようにして
彼は一つの物語を書き終えます。

意思を持つ腎臓のかたちをした石。

ラジオから聴こえてくる
会えなくなってしまった彼女の声。

ただ恋というだけではなく
心の奥の奥を、強くゆさぶるひとに
出会うのは重要なことだと思います。

通り過ぎてしまわないように、
ちゃんと五感を研ぎ澄ませていたら
会えるのかもしれません。

自分にとって本当に意味を持つ相手に。



東京奇譚集 (新潮文庫)東京奇譚集 (新潮文庫)
(2007/11)
村上 春樹

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たまに、丁寧に「生活」したい
と思うことがあります。

そんなとき手に取るのが、暮しの手帖です。

「照明の傘の上や、電球のほこりを
 乾いた布で拭き取りましょう」
「本当の情報とは、
 自分自身の経験であると知りましょう」

はっと気づいたり、
さぼっていたことを反省したり。
背筋がぴんと伸びるような気持ちになります。

お料理コーナーでは、
柑橘の皮の砂糖煮や、えびせんべいの
レシピが載っています。
こんなの手作りしたら素敵。

鍋を磨いたり、窓を拭いたり、
時間をかけて料理をしたり。

そんなふうに丁寧に過ごすと
逆に時間がふくらむというか、
豊かになるんですよね。

慌ただしい日々の合間に
ぱらぱらとめくってみてください。

振りきった針が元に戻りますよ。
きっと。



暮しの手帖 2012年 08月号 [雑誌]暮しの手帖 2012年 08月号 [雑誌]
(2012/07/25)
不明

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今、林檎を食べています。
秋ですね。

読み物の中で、
果物の名前がさらりと漢字で書かれていると、
うっとりします。

蜜柑、葡萄、檸檬…

見慣れないものを調べてみました。

桜桃(さくらんぼ)、檬果(まんごー)。
甘蕉(ばなな)、茘枝( らいちー)
鳳梨(ぱいなっぷる)。

果物というのは色っぽい存在だな
と思っているのですが、
カタカナで書いてしまうと平面的になる。

漢字で書かれていると、艶や、瑞々しさ、
曲線がくっきりと感じられる気がします。

ずいぶん前、
失恋をして何も食べられなくなったとき
年上の女友達が茘枝をどっさり持って
遊びにきてくれました。

紫色の皮を剥くと、
つるりとした真っ白い果肉があらわれる。
さくっと噛むとひろがる、淡い甘み。

不思議なほどたくさん食べられたのを
覚えています。

果物には、人の心を柔らかくする作用が
あるのかもしれませんね。



 
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歌人、穂村弘の
食にまつわるエッセイ集です。

食生活というのは、
とてもプライベートな領域。

彼はそういいます。

ところてんを箸一本で食べるといったら
周りにすごく驚かれたり。

なにかをちゃんと混ぜる、という行為は
手と心が疲れるのだ、と思ったり。

食器洗いのときはお皿の裏側も洗うんだよ
と指摘されてショックを受けたり。

実験台に乗せた、見慣れない研究対象を
おそるおそる顕微鏡で覗いたり
そっと指先でつついてみたりするような
緊迫感。

そんなふうに食べ物が描かれるのは
めずらしい。

そして、穂村弘エッセイの醍醐味、
過剰すぎる意識がめくるめく妄想を呼び、
どこまでも暴走していきます。

穂村さん、大丈夫だよ、落ち着いて!
と声をかけたくなってしまう。
なんだか憎めないんです。

読みながら、ふふ、と口角があがってしまう。
そんな一冊です。



君がいない夜のごはん君がいない夜のごはん
(2011/05/25)
穂村 弘

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ニイタカヤマノボレ。

太平洋戦争で真珠湾を攻撃するときの電文です。

この物語で描かれるのは、
主人公の、匿名である女性からみた
平和を失った世界。

シマウマの夢。
途切れることのない鉄塔。
送電線に向かって音符を投げる予言者。
不審な死を遂げる、同じ匿名である従兄弟。
繰り返す震災、サイレン、そして戦争。

予言者はいいます。

どうしてかわからないけど、
結果だけが得られるから予言なんだよ。

ニイタカヤマノボレ、と主人公が叫ぶ理由。

何だろう、この不穏で暗示的な気配は。

誰もいない砂漠のような場所が映し出される
不鮮明なフイルムを観ているような感じ。

そして、いつのまにか自分が、
その砂漠の中にひとり投げ出されていたような。

わずか8ページほどの小説なのに、
魂ごと持って行かれてしまったようでした。

新潮10月号に掲載されています。
ぜひ、手に取ってみてください。



新潮 2012年 10月号 [雑誌]新潮 2012年 10月号 [雑誌]
(2012/09/07)
不明

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かりっとした、
おいしい蜂蜜パイを焼く熊がいたら
ぜひひとつ買って、食べてみたい。

この熊は、小説家である主人公の淳平が、
親友の小夜子の娘、沙羅に聴かせるお話に
登場します。

淳平と小夜子、そして高槻は
大学時代からの親友です。
淳平は小夜子に想いを寄せていましたが
それを告げる前に、
高槻と小夜子がつきあいはじめてしまいます。

二人はそのまま結婚し、沙羅が生まれますが
やがて小夜子は高槻と離婚します。

そして淳平と小夜子。

恋愛にかける時間は、人それぞれで
急降下するひともいれば、
長く時間がかかるひともいる。

どちらがいい悪いではなく。

少しずつ、少しずつ
迷いから確信に向かう、淳平の心境。
それにぴったりと寄り添うように、
熊のまさきちととんきちのお話が
変化していきます。

本当に大事なひとのことは、
決して離しちゃいけない。

心がじわっと温かくなる、
深い愛情の物語です。



神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
(2002/02)
村上 春樹

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Twitterのタイムラインで、タイトルを見た瞬間
ぎゅっと心をつかまれました。
どんな内容かも知らないまま、書店へ。

この本は、柳美里とゲストとの対談集です。

第一部が、3・11以後の表現と表現者。
第二部が、ノンフィクションとフィクションの間。

ゲストは、詩人、精神科医、映画監督から女優まで、
豪華ラインナップです。

対談相手によって内容はさまざまですが
一様に濃厚。ぎっしりしているんです。
そしてぐいぐい読ませます。止まりません。

世の中に対し、自分のなすべきことに対し
問い続けるということ。
それぞれの媒体で、極限を表現するひとたち。

個人的には、岩井俊二の言葉で、
どきっとしたものがありました。

「ひとは逃げる理由を探すより、留まる理由を探す。
 日常の時間に身を置くと、
 変化より、日常のほうが安全に思えてしまう。」

議題は、震災についてでしたが
これはいろんなシーンに置き換えられる…
と深く考えさせられてしまいました。

久しぶりに、
満ち足りた読書したな…という読後感。

読み終えてすぐ
和合亮一の詩の礫、を読み返し
寺島しのぶのキャタピラーを観てしまったほどです。

濃い読み物をお探しの方、おすすめです。



沈黙より軽い言葉を発するなかれ―柳美里対談集沈黙より軽い言葉を発するなかれ―柳美里対談集
(2012/09/04)
柳美里

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今日は雑誌のご紹介。

雑誌「ケトル」8月号は、村上春樹大特集。
春樹党員としてはスルーできません。

巻頭では、武道家でもある内田樹氏が、
春樹氏のことを
「匂いや触感を緻密に文章で再現できる
作家はまれ」
といっています。

わかるなぁ……
例えば、
パスタを茹でるシーンを読んでいたら
どうしても食べたくなります。
本を置いて実際にパスタを茹でたことも。

12作品女子名鑑、というコーナーでは
風の歌を聴け~1Q84までに登場した
女子たちがずらり。

私はひとり選ぶなら、
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の
図書館に勤める胃拡張の女の子が好きです。

彼女の食欲は、
「機関銃で納屋をなぎ倒すよう」。
そしてすらりとした美女なんです。
素敵だと思いませんか?
(うちに帰ったら読み返そう)

…春樹作品のことになると、
普通のテンションではいられないのです。




(写真は雑誌の表紙、友田威氏のイラスト) 

 

 

 

 
もうすぐ夏がいってしまいそうなので、
今夜は海辺の町の物語を。

この物語は、宝くじにあたった男、河野が
会社を辞めて、美しい海のある敦賀に引っ越し
一人暮らしをするところから始まります。

何もしない生活。海と釣りと菜園。
時折洗車。

そこに、不思議な神様、ファンタジーがやってきて
同居します。

運命の女性との出会い、
かつての同僚からの恋心。

それぞれの登場人物の背景、心情が
痛いほど濃く、
それらを、海がただじっと見守っている。
常に波の音が聴こえてくるような雰囲気があります。

生きていくことの喜びや悲しみ、
起こることをそのまま受け入れるということ。
ひとの人生をリアルに見ている、と感じさせられます。

ファンタジーが苦々しげにいったフレーズが
胸に残ります。

「俺に救われるんじゃない、自らが自らを救うのだ」

敦賀の碧い海を、見に行かなくてはなりません。



海の仙人 (新潮文庫)海の仙人 (新潮文庫)
(2006/12)
絲山 秋子

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わっ、気になるタイトル。
そう思いませんでしたか?

この本は、
ビジネスにおける「話し方に」ついて、
五つの観点から解説しています。

・やんわりな頼み方はやめる
・自分を守る発言をやめる
・伝わらない相づちはやめる
・マニュアル通りの対応はやめる
・自分なんて…は今すぐやめる

個人的に、特に興味深かったのが
「相づち」の章。

会話はテニスのラリーのようなもの。
1.5往復の練習を積んでおくと
相手への気づきが生まれて、いいそうです。

そして、相づち100本ノック。
これは会話の反射神経を鍛えるというもの。

感情のこもった、プラスの、
会話が広がる相づちを
どれくらいもっていますか?

ありがとう、驚きです、熱心ですね、
光栄です、よろこんで、詳しく聴かせて…

なかなか100個は難しいです。

相手の話を傾聴し、
臨機応変に、きちんと心に届く返しができたら、
それは立派なコミュニケーションですよね。

私も、もっと言葉のバリエーションを増やしたら
滑らかな大人のビジネストークができるな、
と感じました。精進精進。

どこの章がツボに入るかは、
多分人それぞれ。

そこも、この本の面白いところだな
と思うのです。


軽く扱われる人の話し方 影響力のある人の話し方軽く扱われる人の話し方 影響力のある人の話し方
(2012/08/23)
大串亜由美

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今夜は分厚い教科書のような本を
二冊持って家を出ました。

考えながら読む本には糖分が必要。

定食屋さんで、
筋子と野沢菜のおにぎりをいただきました。
熱いほうじ茶でほっと一息。

外に出て、
いつものスタバに行こうと北に向かっていたら、
何故か東のほうが気になって
ふらりと方向転換。

しばらく歩くと、向こう側から
バイオリンの音が聴こえてきました。

一青窈のハナミズキを奏でる
路上ライブの男性。
周りにはひとだかりができていました。

夜の空気に溶けていく美しい音色。
気持ちがふわっと柔らかくなりました。

さて、東のスタバです。
一枚窓の向こうは、いつもとちがう風景。

ハイビスカスティーがきたので
これから本の海に潜水します。



 
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昨日、湖にいきました。

キャンプ用のチェアを水辺のぎりぎりに置いて、
足だけ水に浸して景色をみていました。

水は透き通っていて、
向こう側には中島がみえました。
浮遊している感じ。

そんな場所で短編を読むなら…

村上春樹「眠り」(TVピープル収録)

ある夜を境に、
眠りが訪れなくなってしまった主婦の日常。

江國香織「ぬるい眠り」(ぬるい眠り収録)

女子大生が、ある恋を失ってから過ごす
夏の日々。

ふたつとも、物語の中に
湖が出てくるわけではありません。

なにかを失ったときの欠落感、
自分が透明になっていきそうな感じが
湖の、音のないひっそりとした雰囲気に似合う。

眠るというタイトルを選んだのも、
湖には眠っている水のようなイメージが
あるからかもしれません。



 
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アイデアのつくり方。
タイトルだけでわくわくしてきませんか?

アイデアとは、既存の要素の組合せであり、
組合せによって新しいものをつくること
なんだそうです。

アイデアをつくる工程は五つ。
資料集め→資料の咀嚼→問題の放棄
→到来→具体的展開。

資料を集めたら、ひとつひとつ触って
関係を探します。
部分的にアイデアが出てきたら、
さらに探す、嫌になってもやめない。
組合せ続ける。(ここががんばりどころ)

そこまでしたら、問題からぱっと手を離します。
無意識の想像過程を刺激するんだそうです。

すると、お風呂に入っていたり、
という何気ないところで
ぽん、とアイデアが生まれるそうです。

アイデア創出、というと
ゼロから全てを生み出すという
特別な行為を想像しがちですが、
訓練に近いな、と感じました。

アイデアを生み出しやすい
脳の状態をつくる。

私はこの本を
ある大学教授の講演に参加したときに
知りました。

ものを考える職業のひとが紹介する本は
良書が多いんですよね。


アイデアのつくり方アイデアのつくり方
(1988/04/08)
ジェームス W.ヤング

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承諾誘導という言葉を知っていますか?

ひとは、何かにイエスというとき、
自分で選んでいると思っています。
しかし、
そこには相手方の戦略が潜んでおり、
イエスを誘導されていることがあります。

この本は、
社会心理学者である著者が、三年ものあいだ
セールスマン、募金勧誘者、広告主など
プロの世界にどっぷり浸かり、
また、承諾心理についての実験的研究で得た
人の態度や行動を変化させる
「心理的な力」ついて解説しています。

そこには、
主に六つのカテゴリーがあります。
返報性、一貫性、社会的証明、好意、
権威、希少性。

たとえば、一貫性。
ひとは、一度コミットメントしてしまうと、
それと一貫した行動をとろうとする。
心の仕組みとして。
それが意にそわないことでも、です。

危険だな、と思うのは
なんとなく小さな承諾をしてしまうことです。

ひとつの承諾がもたらす自分への影響は
思っているよりずっと大きく、
その後の自分の行動まで決定してしまうそうです。

個人的には、
経験上知っていたこともありましたが
驚愕多発です。

トリックは、
知らないより知っていた方がいい。
きっと役に立つときがくると思います。

辞書みたいに分厚い本ですが、
自分を守る武器になる、一冊です。



影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
(2007/09/14)
ロバート・B・チャルディーニ

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暑い季節が終わらないうちに、
読んでほしい物語があります。

主人公は離婚歴のある中年の病理医です。

彼女は一週間だけ、
なにもしない日々、を過ごすために
タイのリゾート地に滞在します。

ガイドであるタイ人のニミットは
宝石のように磨きこまれたベンツで
彼女を迎えます。
その、完璧な距離感ともてなし。

彼女は午前中から誰もいないプールで泳ぎ、
お昼はプールサイドで美しい完璧な
サンドイッチを食べ、
(このサンドイッチも本当に魅惑的)
そしてまた泳ぐ。
太陽はゆっくり東から西へ移動していきます。

彼女の抱えている深い深い闇が、
時折現れては彼女を揺さぶります。

最後の日、
ニミットからの思いがけないプレゼント。

真夏の日差しの中、
氷山をみているような
アンビバレンス。
身体から感覚が遠のくような、不思議な感じ。

言葉は石になる。
(わかるなあ…
 何度も石に変えてしまったことがある)

もし私がタイに行ったら、
ニミットを雇うことに決めています。





神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
(2002/02)
村上 春樹

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暑い暑い真夏の昼間。
窓の外は雲ひとつない快晴。
涼しい部屋、傍には冷たい飲み物。
くつろいで本でも読もうかな…

そんなときにおすすめな物語。

芝刈りのバイトをしている大学生が
今日で辞めるというその日、
彼は大きな庭のある家に芝刈りに行きます。

じりじりとした日差し、
喉をとおるアイスコーヒーの甘味、
刈られていく芝の緑。

彼の丁寧な仕事が、その家の女主人に気に入られ
ぴりっと辛子をきかせた美味しいサンドイッチを
ごちそうになります。
(村上春樹の描くサンドイッチはいつも魅惑的)

芝刈りの後、
彼は女主人に奇妙なお願いをされます。

濃いウォッカトニック。
女主人の娘の部屋。
たちのぼる煙草の煙。
合間に回想される、別れた彼女のこと。

飲み物の冷たさ、色の鮮やかさ、
そして消えてしまったものが
強烈な日差しとのコントラストで
くっきりと感じられます。

夏が、まるで生き物のように
ここにあります。



中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)
(1997/04)
村上 春樹

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もし雨降りの日に、
短編小説が読みたくなったら
そして、村上春樹という気分だったら
おすすめしたい物語があります。

何日も雨に降りこめられた、
古めかしいリゾートホテルで
一人旅の僕は、
同じく一人旅の女性に出会います。

シーズンオフで、
ホテルはがらんとしています。
クラシカルな図書室に居合わせたふたりは
なんとなく話をするようになります。

彼女の繊細な指の動き、
そして右手をじっとみつめる癖。
彼は、彼女の胸の奥深くにしまった物語を
少しずつ、あぶり出していきます。

雨上がりの夜、
彼女と待ち合わせたプールサイドで
くっきりと光る月。
ぴったりと身体にそったワンピース。
そして彼女の不思議な独白。

切り絵のようなシーン。

ひっそりとした、
雨に似つかわしい気分になれますよ。



中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)
(1997/04)
村上 春樹

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昨日はカフェで友達と待ち合わせ。
窓から公園の緑が望める、静かなお店です。

彼女の言葉からは、そこかしこに
京都のイントネーション。
いいですね。

私は方言を聴くのが好きです。
少し音楽に似ている、と思います。

以前訪れた、
沖縄の市場で聴こえてきた話し声は
外国語のようだった。

果物売り場のおばあちゃんに、
ヤマトのひとかい?と尋ねられ
あ、遠くに来たんだな、と感じました。

夜に観た、映画「夢売るふたり」では
主人公たちは博多弁を話していました。

他愛のない話をしながら
自転車に二人乗りしている夫婦の姿は
幸せそうでした。

地元の言葉というのは、
リアルに感情が宿る気がします。



 

 

 

 

 
4編を収めた、作品集です。

表題作、幻の光は
兵庫県の尼崎で前夫を亡くし、
奥能登の曽々木へ後家として嫁いだ女の
物語です。

やわらかな、女の独白の形で綴られていきます。

前夫は、子供がわずか3ヶ月のときに
自ら命を絶ってしまいます。
真夜中に線路の上を歩き、電車にひかれて。

その理由を、
曽々木で優しい夫と平和な暮らしを営みながら
女はずっと問いかけつづけるのです。
鉛色の海と、灰色の空を眺めながら。

荒々しい自然や、忙しい日常や
育っていく子供たち。
日々が続いていくこと、それが
女を少しずつあちら側(前夫のいる世界)ではなく
こちら側(現実)へ引き戻していきます。

人間はかくも強い。

誰にでも、
幻の光に魅入られる瞬間があるかもしれません。
ひとをあちら側に引き込む光。

それは怖いことだけれど、
うっとりするくらい、美しいのだろうなと
思うのです。



幻の光 (新潮文庫)幻の光 (新潮文庫)
(1983/07)
宮本 輝

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かの有名な、宮本輝のエッセイ集です。

生い立ちから執筆中のこと、
今思うこと、など内容はさまざまです。

一編一編がぎゅっと凝縮されていて
読み応えがあります。

なかでも秀逸なのが、表題のもの。
命の器、どきっとするタイトルです。
一部引用して紹介します。

ひととの出会いとは決して偶然ではなく、
たとえ抗っても、
自分という核を成すものを共有している人間としか
結びついていかない。
とあります。

たとえばある時期、時間をともにしたひとと
疎遠になっていったとしても
それは自然なことなのですね。
人は絶えず変わっていき、
そのときのエネルギーに見合うひとと
また出会っていく。

折りに触れて、この一編を読み返します。
今、自分はどこに立っているのだろう
と俯瞰してみると
大きな流れを感じることがあります。

潮音風声という章の
天分、という一編も、すばらしいです。



新装版 命の器 (講談社文庫)新装版 命の器 (講談社文庫)
(2005/10/14)
宮本 輝

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ある専業主婦が、
夫と別れることを決めます。
理由は、夫としてもう好きじゃないから。

物語は、結婚一年目の幸せな新婚生活と、
結婚十年目の別居生活がランダムに
描かれていきます。

夫は別れることになかなか納得しません。
でも、妻のほうはかたくなで、
仕事を見つけ、狭いアパートに引っ越し、
ひとりの生活をはじめます。

傍目からすると、
まるで落ち度のない夫なのに、どうして。
その理由。
女の側の心情が、繊細に綴られています。

人は誰でも少なからず、
そのひとの前の自分、
相手が幸福に感じるように振る舞う自分
になるものだと思います。

その行為が幸福なうちはよいんですよね。
または幸福だと信じられているうちは。

自分に嘘をついていられなくなったとき、
どうするか。

ひとは身勝手で
いつまでも同じではいられなくて
自分の自由を、本音を
生きるしかないのかもしれません…ね。



幸福な日々があります幸福な日々があります
(2012/08/03)
朝倉 かすみ

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昨日の夜更けのことです。

閉じたまぶたに、閃光のような光を感じました。
続いて、ドーン!という音。

眠りから覚醒すると、
窓の外から聴こえるのは
エンドレスに続く落雷の音、そして激しい雨音。

一時間くらい続いたでしょうか。

私の住む街は
滅多に雷が鳴らないので、耐性がありません。
かなり怖い体験でした。

そんな眠れない中、
雨がつく漢字を頭の中で挙げていきました。
羊を数える要領で。

霜、雪、霧、露、雫。
右にいくほど好き。露と雫は激しいトップ争い。

濡、澪、襦
和の、しどけないイメージですね。


あ。いちばん好き。雨シリーズで。

今夜は雲のない夜空。
欠けはじめた月が白く光っています。

平和な夜に感謝です。



 

 

 

 

 
川上未映子の、初のエッセイ集です。

このひとがつけるタイトルが
好きだな、と思っていました。

文体は句読点が少なく、クラシカル。
和のテイストなのに動的で
ある種の流麗さがあります。
なんだか音楽を聴いているみたい。

太宰治が当たり前のように
自分の身近にありすぎて、
好きかどうかずっと気づかなかった、とか。

桜の木のことを擬人的に、
ほとんど身をやつすほど好きで
春になると桜の前で顔をあげられない、とか。

その行きすぎた感じ、
ぐるぐるとした迷路のような思考。
奔放さと不器用さ。

このひと、
きっとかわいいひとなんじゃないかな。

川上未映子を
少しだけ知ることができる、一冊です。



世界クッキー世界クッキー
(2009/11/13)
川上 未映子

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なんてタイトルなんだろう、と思いました。
それだけで
ひりひりした感触が伝わってきます。

ここに収められた12編の短編は
失われそうな愛情、
それから
失ってしまった愛情が描かれています。

熱帯夜、という一編に
人生は恋愛の敵よ、という台詞が出てきます。
そこには時間が流れているし、他人がいるもの。

たとえ、
ふたりきりで永遠のような場所に立っても
時間を止めない限り
いろんなことが少しずつ変わっていってしまう。

そのことから全力で逃げたり、
必死でみないふりをして微笑んだり
深い傷を負いながら受け入れたりしていくんですね。
人は。
号泣を準備して。

愛情が、坂道をゆっくり降りていく。

哀しすぎて、やりきれなくて、
それなのに
美しい物語というのがあるんですね。



号泣する準備はできていた (新潮文庫)号泣する準備はできていた (新潮文庫)
(2006/06)
江國 香織

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詩人・谷川俊太郎は
どんな暮らしをしているのだろう?

この本は、
彼の普通の日々が書かれたエッセイ集です。

食事のこと
とりとめもなく考えていること
昼寝と午睡について
家族のこと
花の名前を知らないこと

その日々は、
こざっぱりとして、おかしみがあり、孤独。

多分物事を、あるがままの質量で
捉える才能があるのだな、と感じます。
右脳的なひとなのに、
ボリュウムが、変に大きくならないというか。

そこが彼の魅力なのでしょうね。

ダライ・ラマ14世の講演を聴きにいったことが
書かれた日記があるのですが
温かみがじんわりと伝わってきて
すごくいいんです。
たぶん、
何度も読み返すんじゃないかなと思います。



ひとり暮らし (新潮文庫)ひとり暮らし (新潮文庫)
(2010/01/28)
谷川 俊太郎

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