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京都。

行きたい場所がたくさんあります。

緑の苔に覆われ、ひっそりとした祇王寺。

肩越しにそっと振り返る、
永観堂の見返り阿弥陀様。

新緑に縁取られた哲学の道。

赤や白の椿が咲きこぼれる法然院。

この本には、
素敵なイラストと文章で
京都の四季、素敵な場所、美味しいものが
たくさん綴られています。

少し前に出た本ですが古くならない。
ガイドブックのようにも読めるし、
絵本のようにも読めます。

この本と出会ってから、
何度も京都にいきました。

初めてひとりで京都に行ったのは
6年ほど前の12月。

清水寺の、秋の特別拝観で
石の庭をみました。

しんと静まり返った庭には
うっすらと雪が積もっていました。

遠く向こう側にはぼんやりと山の影、
夜空にのぼるくっきりとした白い月。

庭の歴史を語るお坊さんの
低くやわらかい声。

幽玄、という言葉がふわりと浮かんでは
漆黒の闇にとけていきました。



京都ご案内手帖京都ご案内手帖
(2005/10)
平澤 まりこ

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木の枝に雪が薄化粧をし、空の色も淡い。
冬です。

私が住む街よりもっと南の方では
紅葉が真っ盛りなようで、
写真やニュースの映像で見ては、ため息。

いま、もし瞬間移動できるなら、
京都の瑠璃光院に行くのに。

今日、椛という字を初めて見かけました。

木偏に花?

まさか。意味を調べると、もみじでした。

こんなにきれいな漢字を
今まで知らなかったなんて…

椛は新緑の季節と、紅葉の季節で
別の女のようになる。

そして椛は、
自分が美しいことをきっと知らない。
知らないまま、
観るものの心に懸想を落とす。

あるいはひとも、
本当に美しいひとは
そのことを自分では知らないのかも
しれませんね。



 

 

 

 

 
今夜はブルームーンカルテットの
ライブにいきました。
会場は小さな感じのよいカフェです。

お友達から名前をきいたことがあるだけで
ほとんど予備知識がないまま向かいます。
ブルームーンという言葉の響きが
きれい、ということだけを頼りに。

ジャズライブだったのですが、
想像を超えて素晴らしかったです。

音が濃い霧のように立ち込め、
押し寄せてくるのがわかる。
デュークエリントンのキャラバンを演奏を
聴いているときは、鳥肌がたちました。

本や音楽や映像を摂取して
その世界に連れ去られて
自分がなくなる瞬間、というのは
本当に気持ちがいいです。

音楽は、言葉よりもっと粒子が小さく、
するりと入ってきて、体の組成を変える。

見えない波にさらわれて
ふわりと身体が宙に浮くような感じ。

海のようだ、と思いました。



 

 

 

 

 
主人公である私、崎と
亡くなった双子の兄の娘、さき。
ふたりが過ごすひとときの物語です。

つつましくも心地よい一人暮らしをする
崎のもとに、さきが家出してきます。
お母さんに彼氏ができた。

崎は、めんどくさいなあ…
と思いながらも
自分以外の生き物がうちにいて
マンガを読んでお菓子を食べたり、
お風呂に入っていることに
不思議なほどの心地よさを感じます。

誰かと一緒にいるとペースが乱れる、
ひとりっきりでくつろぐのが最高、
と常々感じる崎ですが、
もっと深い、根源的なことに気づく。

ひとは種としては、
誰かと一緒にいたいんだな、と。

読みながら、
静かに何かが開いていく感じがしました。
たとえば現代の仄暗い閉塞感から。
個として偏りすぎていることから。

ここにはとてもスケールの大きいことが
書かれている。
頭ではなく、肌がびりびりと
そう訴えてくるのです。

何度も出てくるのが、さきが大好きな
おばあちゃんのエビピラフ。
エビがぷりっと立派で、
塩とこしょうだけだけで味付けした。

ああ、おいしそう。



新潮 2012年 12月号 [雑誌]新潮 2012年 12月号 [雑誌]
(2012/11/07)
不明

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人の気持ちは日々変わるもので
しゃきっとしてがんばる日もあるし
保留ボタンを押してだらだらする日もある。
色々です。どれも自分。

ふと立ち止まって、
私の方向あってる?ちゃんと正しい?
そう思って不安になったりする。

そんな毎日のとりとめのない思いが
この本には描かれています。

すーちゃんは三十代なかばで独身、
カフェで社員として働いています。

仕事のこと、結婚のこと、老後のこと。
夜、自分の部屋に帰ってきて
テーブルの前で
あれこれ思い悩んだりします。

そして、ふと我に返り
お風呂に入ってさっぱりして寝るんです。
将来はまだ遠い、
明日は目前に迫っている、と。

わかるわかる、この感じ。

すーちゃんが失恋したときに
傷ついている自分を軽く扱ってはならない
と、ひっそりひとりで泣くシーンがいい。

先のことはわからない。
けれど一日一日を大事に過ごそう。

そう思わせてくれる、素敵な一冊です。



すーちゃん (幻冬舎文庫 ま 10-2)すーちゃん (幻冬舎文庫 ま 10-2)
(2009/08)
益田 ミリ

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氷男は氷でできているわけではない。
ただ氷のように冷たいだけ。

主人公の私と氷男はスキー場で出会い、
周囲の反対を受けながらも結婚します。

過去を持たない氷男は
氷山のように孤独でした。
そんなところに私は強く惹かれたのです。

穏やかで単調な二人きりの日々に
彩りをもたらそうと、
私は氷男に、南極旅行を提案します。

南極につくと氷男は突然生き生きとして、
その土地に夢中になる。
硬い響きのする南極語をすぐにおぼえ、
帰ることをやめてしまう。

見渡す限りどこまでも続く氷の荒野。

夫は変わらず私を愛している。
けれど、私はじわじわと
凍りついた世界に温もりを奪われていく。

私が流した涙はからんと氷に変わる。

真っ白な、果てしなく続く
氷の世界にいるような気持ちになります。
毛皮のブーツと毛皮のコートを着て、
ただひとり。

真冬の夜に読むことをおすすめします。
涙が氷に変わらない、あったかい部屋で。



レキシントンの幽霊レキシントンの幽霊
(1996/11)
村上 春樹

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何かでこの本のタイトルを目にして
頭から離れなくなり、
ようやく手に取りました。

熊野の路地に生まれた、
中本という血が流れた若い男たちの
物語です。

中本の血は高貴であり、澱んでいる。
皆、大変な男前で周囲を翻弄します。
そして一様に短命なのです。

路地でただひとりの産婆である
オリュウノオバが
男達を近くで、遠くで、見守ります。

混沌とした路地の風景。
夏芙蓉の甘い匂い。
放蕩の末、命を使い果たしてしまう
男たち。
濃密な生命のうねりに
のみこまれそうになります。

中でも印象深いのが、天狗の松という
一編。

山奥の飯場で働いていた文彦が
巫女の修行をしている女と出会い
路地まで連れ帰ってきて夫婦となる。

神とひとつになるために
鈴を振りながら一心不乱に踊る巫女。
緑一色の山の中で揺れる赤い袴。
巫女の足先から流れる血。

天女を妻にするとどうなるのか。

なんだか神話めいていて
ぞくっとしてしまいました。



千年の愉楽―中上健次選集〈6〉 (小学館文庫)千年の愉楽―中上健次選集〈6〉 (小学館文庫)
(1999/06)
中上 健次

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和の色、の名前が好きで、
たまに和色図鑑をネットで眺めます。

秋の色を集めてみると
枯草色、赤朽葉色、柿渋色、桑の実色。
なんとなく語感から色が想像できますよね。

私の住む街には、冬がきてしまったので
一面、白磁色の風景です。

イルミネーションがはじまって
漆黒の中に浮かび上がる光をみていると、
冬は色がないから
電飾でキラキラさせるのかもしれない
と思いました。

図鑑を眺めながら、ふと
あのひとが液体になったらどんな色だろう、
という遊びを思いつきました。

だれかひとり相手を特定し、目を閉じて、
じっと色が浮かんでくるのを待ちます。

そうすると意外な色が見えたりする。
それが相手に対するイメージなのね、と思うと
改めて驚いたり。

ちなみに私自身の色は、茄子紺色でした。
理由はわからないけれど。

あなたは、何色ですか?



 
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スイート製品のラインナップを
ご紹介します。

職場の説明会で、耳は何度も
スイートという言葉を拾います。

ソフトウェアベンダの説明ですから
suiteです。もちろんsweetではなく。

でも私の頭の中は
どうしてもsweetと変換…

スイートなラインナップ、
うちの本棚にあったかな

がさごそと記憶をたどります。

「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ
「ケイトウの赤、やなぎの緑」江國香織
「おやすみ」川上弘美

…なんか違う。
純粋なスイートじゃないんです。

物語にまざりこむのは
砂糖を焦がしたカラメルソースのような苦み。
細い針でちくりと刺したような痛み。

そういうほうが、一瞬の幸福を
甘露のように感じられる気がするんです。

ビターなものでしたら、
各種取り揃えております。



 
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あなたと暮らしているのは、
空気のかたまりと暮らしているような
ものだった。

小村の奥さんはそう書き置きして
うちを出て行ってしまいます。

離婚の手続きをし、二週間の休暇をとると
同僚から、釧路にいる妹に
ある荷物を届けてほしいといわれて、
引き受けます。

10センチ四方の、重さのほどんどない箱。

二月の釧路。凍てついた空気。
空港まで迎えにきた同僚の妹と
その友人、シマオさん。

小村は彼女たちと食事をし、
宿泊先まで案内され、
シマオさんとふたりになります。

彼女は、普通のかわいい女の子ですが
時折、預言者のようなことをいうのです。

「でもどれだけ遠くまで行っても、
 自分自身からは逃げられない」

そして、
運んできた箱には何が入っていたのか。

物語を読んでいるというよりは
何かを受信しているよう。
たとえば啓示のようなものを。

けれどそれは一種の暴力的なやりかたで。

深い井戸の中につきおとされる。
実はそれは井戸ではなくて
ブラックホールのような暗闇だった。

物語自体が生きているような
圧倒的な力を持っているのです。



神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
(2002/02)
村上 春樹

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くまに誘われて散歩に出る。

こんな書き出しで物語は始まります。

主人公、私が住む部屋の
3つ隣の305号室に越してきたのは、
とてもおおきな、成熟したくまです。
礼儀正しくて、だいぶ昔気質な。

くまは川につくと、
水に入り、さっと魚を捕ります。
ナイフで開きにして葉っぱの上にのせる。
干物を作ってくれるのです。

くまのお弁当はフランスパンに
ラディッシュとパテをはさんだもの。

昼寝用です、と大きなタオルを
貸してくれたりします。

こんなくまがいたら、
日曜日を一緒に過ごしてみたい。

同じ物語が、震災後の設定で
もうひとつ書かれています。

水田も、河原も、様子が変わってしまった。
くまはガイガーカウンターを携帯している。
同じ風景なのにひどくせつない。

著者はあとがきでいっています。

日常は続いてゆく、
けれど日常は何かのことで
大きく変化してしまう可能性を持つものだと。

何気ない日々は、誰かの笑顔は、
実はとても価値のあるものなんだと
改めて感じさせられます。

心がすうっと透明になっていくような
読後感。

くまの神様のお恵みが
あなたの上にも降り注ぎますように。



神様 2011神様 2011
(2011/09/21)
川上 弘美

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アイロン、マグライト、シュレッダー、
ジューサー、ズボンプレッサー。

この本は、家電をキーに様々な小説を
集めて書かれた、書評エッセイ集です。

家電がどんな存在で描写されているのか、
それが著者が注目しているところ。

電話のように、向こう側にある意味
(たとえば伝達)が重要なものではなく
できるだけ無機質に、淡々と、
異様なまで細かく描写されるのがいい。

そこから浮かび上がる空白のようなもの。

これは著者自身の小説「ジャージの一人」から。

 暗闇で電子レンジの輝きを、
 また腕組みをしてみつめる。
 レンジは物を暖める。
 だけどみていると、向こうが暖まって、
 その分なんだかこちらが寒いような
 感覚がある。

あ、いま夜中のキッチンにいる。
たぶん素足でスリッパをひっかけている。
少しだけ、心もとない気持ち。

イメージがふっとたちのぼってくる。
追体験する。
これですね。小説を読む楽しみは。

紹介される小説のラインナップも
素晴らしく、読み応えは十分。
ただ、著者の視点は少々(だいぶ?)
マニアックです。

取扱注意で、お願いします。



電化文学列伝 (講談社文庫)電化文学列伝 (講談社文庫)
(2011/11/15)
長嶋 有

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奇跡とハイジャンプは似ている。

この連作短編を読むと、
そんな風に思います。

くるくる変わる語り手のそばに
ぴりっとスパイスのように存在する陣内。
彼は少年少女の更生を担当する
家裁調査官です。

試験観察中の生意気な少年に
「俺は生まれてから一度も
ダサかったことなんてねえんだよ」
と、自信たっぷり言い放ったりします。

彼は、心がねじれてしまった少年達が
本当にほしいものを差し出す。
空洞の形にぴたりと沿ったものを。

強引で、無秩序で、
時にはとんでもない離れ技も使います。

彼が起こすのは
多分奇跡と呼ばれるものです。
眩しくて温かくてずっとみていたい。

チルドレン2、この物語で
陣内が少年に贈った最高のプレゼントを
ぜひ体感してほしいです。

最高という言葉は、
こういう時に使うんだ、って思いますよ。
きっと。



チルドレン (講談社文庫)チルドレン (講談社文庫)
(2007/05/15)
伊坂 幸太郎

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中間地点に降りたくなりました。

職場でもなく家でもない場所。

お気に入りのカフェに入ると
貸切のように静かです。

ジンジャーティーをたのんで、
バックの中から
川上弘美の「神様2011」を
出そうとしたら、入ってない。

忘れた…

気を取り直して、
ぼーっとすることにしました。

読むとか書くというのは、
視覚を使う行為だな、と思います。
文字を目で追いながら、
高層ビルでも建ててしまいそうな勢いで
イメージしてしまう。

その回線をオフにすると、
一気に音が身体に流れこんできます。

ゆったりした低いボーカルの歌声。
ぱら、と紙をめくる乾いた音。
ソーサーにスプーンを置く金属の音。

たまにはいいですね。
イメージしない夜も。



 

 

 

 

 
紅葉前線が南下しています。

ニュースでみかけて、
紅葉前線という言葉があるんだ、
と思いました。

一緒に南下したい…と切実に思う
この頃です。

木の葉が風に乗ってはらはらと舞う姿を
私は木の葉吹雪と呼んでいます。
そんな言葉があるのかは知らないけれど。

桜吹雪よりもシックです。
色とりどりで、
けれど乾いた哀愁をまとって。

お気に入りの公園の一角で、
もみじの樹が地面いっぱいに
真っ赤な葉を降り積もらせていました。

はらり、はらりと
枝から離れて風に踊る赤。

もし周りに誰もいなかったら
落ち葉の中に
ばさっと倒れこみたかったなぁ…



 

 

 

 

 
なんて美しいタイトルなのでしょう。
深い森の、雪解けの水辺を思い浮かべました。

この連作短編集には
雪沼という名の小さな町で、
緩く繋がった人々の日常が綴られています。

さらさらと、砂時計の中の
真っ白な砂が落ちていくような文章。
字を追いながら、目が喜ぶのを感じます。

ピラニア、という物語で素敵なシーンを。

平凡な町の食堂を二十年営む安田さんは
近所の果物屋さんに出前を届けます。

この料理、向かいの病院の駐車場まで
持って行ってほしいの。花屋さんと。
果物屋さんにそう言われ、
花束を抱えた聡子さんに引き渡されます。

出前機のトレーを外し、料理の上に
花束用の大きな白い紙をすっぽりかぶせて
木陰に止まったワゴン車まで向かいます。

ワゴン車の中には、
病院食に飽きた長期入院患者。

どんぶりに口をつけて
チャーシュー麺のスープを一口飲んだ
患者の若者が呟きます。
心底嬉しそうな声で。

ああ、うまい、
こんなうまいもの久しぶりだ。

この後も、善意ある駐車場への出前は続き
聡子さんは安田さんの奥さんになるのです。

送り火、という習字教室の物語も
とてもとても素敵なのですが、この辺で。



雪沼とその周辺 (新潮文庫)雪沼とその周辺 (新潮文庫)
(2007/07)
堀江 敏幸

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この物語には、一つ屋根の下で暮らす
私、シワスと、イチ、サツキ、ナナの
季節をじんわり感じながらすごす日々が
綴られています。

文筆業のシワスが同居人達と交わす会話は
くすっと笑ってしまうものばかり。

ツイタチって、いつも月曜日じゃないの?
トカゲは、長生きしちゃうからなあ。
椎の実だろ、フライパンで炒って食べた。

そしてシワスが感じる、四季の幸せ。

冬、使い慣れたやわらかい羽毛布団や
毛布にくるまって眠ることの心地よさ。
このまま春まで冬眠できたらいいのに
と考えたり。

初夏、熊野川のほとりを歩き
冷たい水に指先を入れて、
いつかは、こんなきれいな水の一部に
だれもかれもがなるのだ、と思ったり。

生きるということは実は贅沢なことで
花の種が、濃い緑から立ち上る霧が
柔らかい腐葉土が、夜空を低く流れる星が
それを思い出させてくれるのです。

さまよったり、立ち止まったり
ゆるんだり。

心がほわっと温かくなる。
味わい深い一冊です。



ゆずゆずりゆずゆずり
(2009/03/05)
東 直子

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昨日、図書館でたくさん本を借りたので
今日はお休み、朝から読書三昧。

そう思っていたのです。

朝起きて、
いま洗濯機回したら夜に乾くかな
回している間に本読もう。

洗濯機のボタンを押したら
バスルームが気になりだし、
掃除を始めてしまいます。
これ終わってスッキリしたら読もう。

掃除を終えて洗濯物を干したら
お腹がすいてきてしまいました。
ごはんだ、ごはん作って食べて、
終わったら読もう!

後片付けして、食後のお茶も入れて、
電気マットのスイッチ入れて、
クッションにもたれて、
ブランケットをかけて、
さて、読もう…

読みはじめて10分ですやすやと昼寝…

はっと起きたら一時間経っていて
もうヨガに行く時間。

ヨガ終わったら絶対スタバに行こう……

そして、スタバです。

一時間半、心ゆくまで読書しました。
傍らには熱いチャイとスコーン。
ああ、幸せ。

家ではどうしても、読めないんです。



 

 

 

 

 
この物語には、
奇妙なかたちの家族が描かれています。

二月の、
灰色とうす茶色がまざった冷たい空気の中
私と息子の樹は手をつなぎ、動物園に行きます。

じっくりと、順路通りに
しまうまやゴリラやフラミンゴを眺める。
合間に回想されるのは、
夫との楽しかった思い出のシーン。

お弁当を食べたあと携帯が鳴る。
今どこ?一緒に夕食でもどうかな、と夫から。
私も樹も、飛び上がるほど喜んで、
白熊の前で待ち合わせをする。

夫はどうしても「家庭の生活」になじめず、
一緒に暮らすことや樹と接することに戸惑う。
次第に友人の家に外泊することが増え、
ついにはひとりでアパートを借りてしまう。

待ち合わせ場所に現れた夫と
三人で楽しく動物園をみてまわる。
その圧倒的な幸福。

おかしいよ、あんたたちのその関係
周りにはいわれるけれど
たとえ最愛の夫と一緒に暮らせなくても
どうにかしてやっていかなくてはならない。
私はそう思うのです。

私たちは家族なんだ、という気持ちと
私たちは家族なのだろうか、という気持ちが
ゆらゆらする。

動物園にビターなエピソードを
かけあわせてできる
茫漠とした空気感がすごくいい。

幼い樹の赤らんだ頬、ぽってりした唇。

ヨーロッパのショートフィルムを
観ているようです。



泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)
(2005/02/18)
江國 香織

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導線、という硬質な言葉にマジックをかけて
ふわりとやわらかいものを表現する。

そういうのが本当に上手だな、この作家は。
と思います。

ある真夜中から朝にかけて、
一組の男女が過ごす時間が綴られます。

真っ暗な部屋の中で眠る恋人を起こさないように
電気をつけず、そろりとリビングまで移動する私。

私が少し前にさかのぼって回想するのは
掃除機のルンバが、深夜のリビングに描く導線。
それから、私たちが描いた導線。

朝ごはんはコーヒーとフレンチトースト、
ソーセージを添えたサラダ。(美味しそう)

朝の光の中、ふたりでいることが
ただただ嬉しい。
うす桃色と萌葱色と日差しの金色が
淡くまざったような空気が伝わってきます。

印象的だったのは、

「生きているとだんだん、
 何かを見積もれるようになる」

というフレーズ。

見積もれるようで、見積もりきれない。
そういうのが一番楽しいんじゃないかな
と思います。



電化文学列伝 (講談社文庫)電化文学列伝 (講談社文庫)
(2011/11/15)
長嶋 有

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夕暮れのカフェでゆっくりするというのは
意外と機会が少なくて、
そのせいか贅沢なように感じます。

昼と夜の狭間である夕暮れは、
心もとなくて、実はちょっと苦手です。

いつも読む本の温度より少し高めの、
あたたかいものが読みたくなります。

東直子の「ゆずゆずり」のような
じわっと日常の幸せを味わうようなものとか。
川上弘美が、雑誌のクウネルに
連載している短編もいい。

いまの季節なら、傍らには
熱いチャイやミルクティーがいいですね。

明日も雨かなあ。



 

 

 

 

 
寝転んで本を読むことが多かったせいか
左眼より右眼のほうが視力が悪いので
裸眼の時は片目をつぶる癖があります。

焦点をあわせるために。

岡崎京子の「愛の生活」で、
主人公の兄が同じように
片目をつぶっていたことを思い出します。
みんなが一方通行の想いを抱えていて
痛々しいけれど好きな一冊です。

物語の中で、素敵なひとが
メガネをかけたり外したり触ったりする
シーンが出てくると嬉しい。

こちらは愛用の、theoのメガネです。



 

 

 

 

 
この物語は、主人公の妻の友人から聴く、
奇妙なエピソードから始まります。

彼女の両親は、
彼女が大学2年の時に離婚しました。

きっかけは、彼女の母が単身ドイツ旅行に
出かけ、現地で夫に頼まれたお土産の
レーダーホーゼン(つり紐つきの半ズボン)を
買いに行ったことでした。

父は若い頃、女性関係がだらしなくて
母は苦労したようだったの。
でも歳を重ねてトラブルもなくなって、
このまま仲良くいくと思っていたのよ。
彼女は話します。

彼女の母は結局、
二度と家には戻ってきませんでした。

なぜか。

彼女の母が買いに行った
レーダーホーゼンの店は
本人が出向き採寸が必要なシステムでした。
彼女の母は根気よく店主と交渉し、
夫と同じ体型のドイツ人を捜してきて
採寸する、ということでOKをもらいます。

採寸をはじめる店主と、夫と同じ体型の
ドイツ人がにぎやかに談笑しているのを
彼女の母はみていました。

すると、夫に対する耐え難い嫌悪、
激しい憎しみがこみあげてきたのです。


妙に頭に残るエピソードで、
何度となく読み返しました。

感情は、なにかがあったときに
即座に出てくるものだけではないんですね。

長い時間をかけて、
意外な瞬間に気づくこともある。

侮るなかれ、他人を。そして自分を。
そう思うのでした。



回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)
(2004/10/15)
村上 春樹

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市内にある国立大学に
ちょっと名の知れた銀杏並木があります。
雨が降りそう、でも行こう。

銀杏並木は見事に黄色く色づいていました。
あんまりきれいで、
時間を忘れて写真を撮っていたら、
いつのまにか身体が冷えきっていました。

ちょうど大学の附属図書館の前を通ったので、
入ってみることに。

ゲスト登録して、フロアへ。
百科事典と難しそうな研究書と
パソコンがずらっと並んでいます。

普段、足を踏み入れない場所に
涼しい顔で紛れ込むのって楽しい。

新着本の棚に村上春樹の研究書があったので
手に取り、閲覧スペースに移動します。

学生たちが静かに書き物をしている。
年配の方は分厚い辞書をめくっている。

紙の音、席を立つ音、
キーボードを打つかすかな音。
聴こえるのはそれくらい。

いい図書館だなあ。

そして、選んだ本がすごく面白くて
読書の海へダイブ…小一時間経過です。

いつのまにか、
身体もあたたかくなっていました。

また来ようかな。



 

 

 

 

 
この物語は、動物園が舞台です。

僕と彼女の千穂は、
間もなく東北と神戸で遠距離恋愛になってしまう
ぎくしゃくした気持ちを抱えながら
デートをします。

そこで、失踪した姉の元彼、
富樫さんとその彼女に偶然出会う。

個性的なキャラクターの姉は、
彼氏と別れるたびに、旅にでるひとだった。
三年前、富樫さんと別れてから
カナダと北極にいって白熊をみてくる、と言い残して
そのまま帰ってきていない。

姉が熱烈に好きだった白熊を
居合わせた4人でじっと眺めることのシュール。

アイスを食べて、アメリカンドックを食べて、
マンドリルをみて、花火を観て。
時間の経過とともに
それぞれの心がやわらかくなっていく。

ひととひとは、
近くでみればみるほどわからなくなるけれど
遠くからみると、ちゃんとつながっている。

なんかいいね、そういうの。
と思わせてくれます。

そしてもちろん
「伊坂的小さな奇跡」がちりばめられていて
幸福な気持ちになれますよ。



I LOVE YOU (祥伝社文庫)I LOVE YOU (祥伝社文庫)
(2007/09/01)
伊坂 幸太郎、石田 衣良 他

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