上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 

 

 

 

 
いいひとの定義ってなんですか?

仕事中に聞こえてきた会話の断片。
そこだけが頭の隅にひっかかって
しばらくとれないのです。

いいひと。
この言葉、あちこちでよく聞きますが
改めて考えてみると
ぼんやりとした、枠の広い言葉です。

周りはどう思っているのか、リサーチ
してみました。
いいひとってどんなひと?

時間を守る
感じがいい
仕事を前に進める努力をする
常識をわきまえている
節度がある
思いやりがある
主張に一貫性がある
二面性がない
悪気がない
約束を守る

色々出てきます。
ひとによって本当にさまざまで面白い。

いいひとなんだけどね…
という言葉もよく耳にします。

これは、いいひとという枠のへりに
ぎりぎり片手だけでつかまっていて
風がぴゅっと吹いたら落ちちゃいそう。

真っ白のいいひとや真っ黒のわるいひとも
いるのかもしれませんが
多くのひとは
白とグレーと黒がマーブルになっている
んじゃないかと思ったり。

ひとの第一印象はコンマ五秒できまる
とか。
よーし明日はいつもより口角上げて。



 
スポンサーサイト
テーマ * ブログ ジャンル * ブログ

 

 

 

 
今夜は、先日ご紹介した
小川洋子「冷めない紅茶」の対談編です。

深海で待ち合わせしていただいたのは
素敵な写真と言葉で日々を綴られている
Blog Nowhereのstick boyさんです。

1.シュールの描かれ方

s:
シュールにも抽象的なものと具象的なもの
とがあると思うのですが、
この作品は、具象的な部類に入るのかなと
感じました。

涼:
そうですね。
さらっと読むと、あたりまえの日常が
描かれているように思えます。
けれど何かが致命的にずれている。
どこかに小さな暗い穴があいていて、
少しずつ吸い込まれていくような。

s:
ちりばめられている伏線めいたものの、
各々の輪郭ははっきりしているのに、
全体としては、すごく宙ぶらりんな
ところに留まっている。

涼:
具体的なイメージがありますか?

s:
絵画で言えばダリみたいな感じでしょうか
描かれている個々のものは、溶けていたり
曲がっていたりもするけれど、
形態を保っている。なのに、
画面全体の秩序はあきらかに狂っている…


2.こちら側とあちら側

涼:
この本を読んだタイミングが、
いつもとコンディションが違ったんです。
ひどい風邪をひいて声が出ず、二週間ほど
仕事もオフもメールだけのような状態で。

そうしたら主人公がサトウの持つ現実感を
たまらなく気持ち悪い、という感情が
リアルに理解できてしまいました。

あちら側は汗もかかず、虫歯にもならず、
ゴミも出ず、時間が止まった世界です。
静謐で美しく、誰も傷つけない。
人はコンディションによって、あちら側に
近づいてしまうことがあるなあと。

一時的に、神経が過敏になっていたせいか
現実を生きるにはある程度鈍くいることも
必要なんだな、なんて思ったり。

s:
コンディション次第…というのは、
分かる気がします。
この作品は、甘美でノスタルジックな
あちら側の世界をただ肯定したりはせず、
ぎりぎりのところで判断を留保している
ように思えます。

見たことのない光景を目の当たりにし、
「これは一体なんなんだろう」と
思っている、
まさにその瞬間を捉えている感じ。
だから、その先どちらに転ぶかは、
読み手次第なのかもしれない。


3.ライオンゴロシ、という植物

s:
ところで、作中に出てくるライオンゴロシ
という植物は、実在するものなのですか?

涼:
はい。ネットで画像を見ましたが
世にも恐ろしい形をしていました。

あの植物を製図用の鉛筆で仔細に描く
主人公の行為も最高にこわいけれど
もし口に入れられたりしたら失神します。

残酷な気持ちを抱く瞬間、って
誰にでもあると思うのですが
そのグロテスクな形に自分でびっくりして
ぷるぷる、と首を振って打ち消したり
しませんか。

けれど小川洋子は、
その残酷な感情を顕微鏡で覗き見て
一ミリの狂いもなく言葉に移し替える。
美しい精密機器をみているかのようで、
芸術的とすら感じてしまいます。

s:
描き出された姿が曲がったり歪んだり
しているのは、
対象物の在り様を忠実にトレースしている
からなのかもしれませんね。


まとめ(涼虫の独白)

ここに、一枚の絵がある。
淡い水彩画の、どこか秩序の狂った。
テーブルの上には冷めない紅茶。
窓の向こうには真っ黒い海。

ぴり、と海を指先で裂けば
なまぬるい水が指先を黒く染める。

いつだって絵の中に入ることはできる。
選択肢はこの手の中にある…


stick boyさん、ありがとうございました。



 

 

 

 

 
仕事を無くした男と女がゆらゆらと
都心を彷徨っています。

男は失業してから定職につくことなく
その日暮らし。
女は男に不満こそあれ、離れがたく。

歌舞伎町のホテル、千葉にある女の実家、
中野の知人の家を二人は転々とします。
まるで浮き草のように。

時間つぶしに昼間の町をぶらぶらしながら
透明人間になりたいなあ、と夢見るように
呟く男。
透明人間になったら、食べてるたい焼き
だけ宙に浮いてみえるのかな、どう思う?
女は絶句しながらも男を憎めないのです。

無線飲食を覚悟で入った寿司屋で
たらふく寿司を食べた二人は、
こっそり時間差で店を出ることにします。

女が待つ場所に戻ってきた男は、
興奮気味に、仕事と住む場所を得たよ、
といいます。
女は訝しみながらもついて行くのですが…

男の天真爛漫なダメっぷりが
いっそ魅力的にまで思えてきます。

世の中は需要と供給のバランスがとれて
いればいいのだから、
男女間も組み合わせとして成立すれば
オッケー。

もし、まっとうな良いひとばかりで
構成されていたら、退屈かもしれません。

そして自由って。

何かを手にしているのが自由なのか。
逆に、何も持たないのが自由なのか。
どう捉えるかは自分次第です。

実は最後に、
この浮草男は本当に夢を叶えるのです。
なんとも意外なやり方で。

それは、ここで書くのはもったいないので
あなたの目でお確かめくださいね。



群像 2013年 02月号 [雑誌]群像 2013年 02月号 [雑誌]
(2013/01/07)
不明

商品詳細を見る
 

 

 

 

 
草木染めでもしてみようか。

道端の草をみて突然思い立った男、惟安は
草木染め工房を見かけた記憶を頼りに
とある盆地に出向きます。

記憶の場所には工房がなく、
諦めきれずに川沿いを散策していると
亡くなったはずの父と再開します。

父の服装が異様すぎて惟安は絶句します。
肌の微妙な露出、アクセサリー、パーマ…

その格好は?恐る恐る惟安が尋ねると
私は大日如来となったのだ、と父。
よくみると確かに大日如来スタイルです。

父はいいます。惟安家を再興してほしい。
そのためにお前の未来記を教えてやろう。
惟安はこくりと頷きます。

お前は一月生まれだから山羊だな
見えたぞ、お前には大きな使命がふたつ…

アングラ、町田ワールドの渦に
あっという間に飲み込まれていきます。

来年、再来年に起こる出来事を朗々と語る
大日如来は「髪の分け目を変えてみると
いいでしょう」などとその時期の星占い
らしきアドバイスを差し挟んだりする。
山羊経の暴走は止まらない。うわあ。

パステルカラーで塗られた劇画タッチの
大仏如来が、歪んだり膨らんだりしながら
ふわふわと目の前に浮かんでくる感じ。
シュールとコミカルを八対二で割った世界
…あれれ、混ぜ合わせのせいかぶくぶくと
気泡がたってきた。気泡は溢れ出して
一気に天に上がり青空に虹をかける。
なんてきれい。

大日如来となった父の予言は当たるのか。

当たるよね。だって毘盧遮那でしょ。
仏の中の仏でしょ。宇宙そのものでしょ。



群像 2013年 02月号 [雑誌]群像 2013年 02月号 [雑誌]
(2013/01/07)
不明

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
梨木香歩に似た作家を私は知りません。

学者かと思うほど自然界に造詣が深く、
かっちりした文体で独特の深い世界を
構築する、特別な存在です。

このエッセイ集では、著者がカヤックで
国内、海外の湖や川へ漕ぎ出していく
体験が書かれています。

音もなく水面を割って進んでゆく情景、
透明な水の流れを眺めながら
浮かんでは消えるとりとめのない想い。
読んでいると一人旅をしているような
感覚におちいります。

海のエピソードも多く書かれていますが
なかでも興味深いものをひとつ。

天女の羽衣を隠した男が、女を妻にするが
ある日女は自分の羽衣をみつけ、
夫を置いて天の国へと帰ってしまう。
有名な「天女の羽衣」のストーリーです。

このストーリーは
世界各地で採集されるらしいのですが、
スコットランド版になると
羽衣が、アザラシの皮になるそうです。

…自分の皮を見つけた女は
さっと身につけて海豹の姿に戻り
海へ飛び込んでしまう。

なんだか童話的、と思いますが
動物園でしかアザラシをみたことのない
日本人とは、アザラシの存在が
全然別のものなのだろうな、と感じます。

アザラシのいる水底の国は
竜宮城のような世界かもしれません。

気の向くまま、開いた頁から読み始めると
ひたひたと水辺の気配に包まれる。
深い静寂が訪れる。

贅沢な時間が、ここには流れています。



水辺にて on the water / off the water (ちくま文庫)水辺にて on the water / off the water (ちくま文庫)
(2010/10/08)
梨木 香歩

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
しばらく社交筋を使っていなかったの
ですが、筋力がだいぶ衰えている…
と気づく出来事がありました。

急に出張で来た、仲のいい目上の方から
今度は前もって連絡するから飲もうね!
と声をかけられたとき、
一瞬ぽかんとしてから
ほんとですか?絶対ですよ~と
返した自分。(マスクしていてよかった)

そして後で来た筋肉痛。
全然気の利いた返しできなかったなー
なんか前より精度落ちてない?自分。

社会生活を円滑に営むためには、
ある程度、社交のための筋力が必要です。

最近シュール系の本や映画を過剰摂取
しているせいか、現実からかなり
離脱してるのかもしれない…

そんなとき、私は村上龍の短編や
エッセイを読みます。
ふわふわと地に足がつかない状態を、
フラットな地平線まで戻してくれます。

無趣味のすすめ、というエッセイ集に、
スケジュール管理という章があります。
一部を「」書きで引用しますね。

「やるべきことを複数抱えていて、
 それに優先順位をつけられるひとだけが
 スケジュールを組む必要がある。

 仕事とプライベートにおけるその人の
 優先順位が、その人の人生なのだ。」

何十回も繰り返し読んだ、この言葉を胸に
優先順位を考えてみました…現実的に…

お風呂に入って、恩田陸の「夢違」の
続きを読もう。



 

 

 

 

 
先日ブログで、コアな森林派で…
と書いたのですが、今夜はその続きです。

季節の中で一番好きなのは新緑の頃です。

森の木々がふわりと淡く若葉色をまとう。
芽吹いた葉の気配や息遣いを感じる。
濃い酸素が霧のようにたちこめる。

一日一日、緑が深くなっていくのを
肌で感じる無上の幸せ。
五月に永遠に閉じ込められたい、と
毎年のように思うのです。

季節は桜が蕾をつけはじめて
空気をふんわりうす桃色に染める頃から、
銀杏の葉が黄金色の絨毯のように
小道を敷きつめる頃までを一周とする。
冬はなし。

という生活をなんとかできないかな、
と思い巡らせると
渡り鳥生活しかない…と行き着きます。

北半球と南半球までワールドワイド
じゃなくても、冬は沖縄に住めばいいし。

元々、定住に関心が薄いほうなので
暮らしが立ちさえすれば
いつでもそちら側に移りたい。

もしも、うまくシフトできたら
あなたの街の新緑の季節にも
降り立つことがあるかもしれません。

スタバのソファーで紅茶のマグを片手に
一心不乱に本を読んでいる女がいたら、
あ、ついに涼虫が緑色の羽を得たんだな、
と思ってくださいね。



 

 

 

 

 
砂がさらさらと落ちてくる。
服の結び目にも、首筋にも、唇にも。
砂は留まることがない。
風に踊らされて、時には吹きだまりとなり
人さえも閉じ込める。

かの有名な安部公房の「砂の女」です。

昆虫採集のため砂丘に出向いた男は、
貧しい部落の、砂の崖の下に建つ家に
一晩だけのつもりで宿泊しますが、
翌朝、縄梯子が撤去されていることに
気づきます。

その家には未亡人の女がひとり住んでおり
かいがいしく男の世話をします。
男は部落の人々に、未亡人の女の家の
男手としてあてがわれたのです。

日に一定の量の「砂掻き」をすると
水や食料などの配給が届けられます。

男は脱出を何度も試みますが
砂はつかみどころがなく
さらさらと崩れては男をあざ笑う。
そして部落の人々は脱出を妨害します。

従順なのに得体の知れない不気味さを
持つ女が時折みせる、ねっとりした色気。
男の胸の中で荒く渦巻く感情。
抵抗、言い訳、屈服、憐憫…

逃げ出したい男の切迫した心境にさえも、
砂は容赦なく降り積もっていく。
ざわっとする、不吉な雰囲気なのに
一気に読めてしまう魔力がある。

自分までが崖の上にたたずんで
穴の中の二人を見ているようです。
砂が頬を撫で、口の中がじゃり、と
音を立てそうなほどの臨場感。

ああ…一度、砂を落としてきます。



砂の女 (新潮文庫)砂の女 (新潮文庫)
(2003/03)
安部 公房

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
うまくいえなくて淋しい思いをする
ことって、いっぱいあると思うわ。

ある葬儀に参列した主人公、私は
10年ぶりに中学校の同級生だった
K君と再会します。

そのあと、私はK君の家に招かれます。
K君は、中学校時代に図書室にいた
美しい司書の女性と暮らしていました。

そこで私は、時計が止まったような、
静謐で満ち足りたひとときを味わいます。

一方で私は、共に暮らす恋人、サトウの
平凡で現実的な性質に隔たりを感じます。
この男は私の話を全然理解しない、と
憎しみさえ覚えるようになるのです。

事実の向こう側にあることを
K君と司書の彼女となら共有できるのに。
私は二人との時間に惹かれていきます。

あるきっかけで、私は
中学校の図書室が5年前に火事で
全焼していたことを知ります。
そのとき死者が二人出ていた…

この物語は、注意深く読まないと
境目がわからないのです。
主人公の私は、いつのまにか
あちら側の世界に魅せられてしまいます。

ほんの少し何かが狂った瞬間に
そこから道は分かれる。
いつのまにか軌道修正できないところまで
運ばれていく。

紅茶が冷めない空間は、さらりと現実に
まぎれこんでいるかもしれません。

湯気がいつまでも消えないときは
向こう側に知らない海が見えたときは
どうかご注意を…



冷めない紅茶 (福武文庫)

 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
飛行中の大型旅客機のなかでは
着想が身体を離れて浮遊する。

それを銀線細工の捕虫網で
捕まえることが私の仕事です。

そう話す、資産家エイブラムス氏の
事業のひとつに
希代の他言語作家、友幸友幸が世界中で
書き残した膨大な物語の収集があります。

友幸氏をめぐって綴られるこの物語、
語り手はくるくると変わります。

機内でエイブラムス氏と乗り合わせた私
「猫の下で読むに限る」の翻訳者
遠い異国でフェズ刺繍を習う流浪の人物
友幸氏の捜索を担うエージェント
エイプラムス記念館の手芸を読める女
鱗翅目研究者の老人
そして独特な羽の模様を持つ蝶。

様々な言語が錯綜する中、
時折呪文のように現れては消える言葉。
流れが尾を噛み輪になれば、
それはもう流れではなくなる…

架空の物語と現実と幻想が
編み目模様に繋がっていきます。
視点がかわっては、近づき、遠ざかる。
男が女になり、腕が3本になる…

とらえどころのない、幾何学的な模様を
した異国の刺繍をみているようです。
縫い上がりそうになっては解かれる、
また別のところから緻密か模様が始まる。

つかもうとしてもするりと逃げられて
読めば読むほどわからなくなる。
そのうちに蝶の思惑どおり、
意識まで預けてしまった。

私は未だに、道化師の蝶から
自分を取り返せずにいるのです。



道化師の蝶道化師の蝶
(2012/09/28)
円城 塔

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
待合室の書棚にある
ふわふわと口当たりのいい雑誌の間で、
その本は辞書のようにずっしりと分厚く
ひときわ異彩を放っていたのです。

誕生日事典。
心理学、歴史学、数秘術、タロット占い、
占星術をベースにした手軽な性格診断の
ガイドブックです。

それぞれの日に、キャッチコピーのような
一文がついていて面白い。

壮大で憧れちゃう…と思う誕生日。

2/12 人びとの架け橋
4/4  大空に1人輝く星
7/26 時代を読む天才

女と生まれたからには!の誕生日。

7/19 立ち居振る舞いの美しい人
11/12 セクシーなカリスマ

キャッチコピーの後に、細かい性格分析、
長所、短所、アドバイスなどが続きます。

自分の誕生日のところをじっくり読むと
当たらずとも遠からず。
毎日のように考えていることが
さっくり書かれていたり。
えー、と思うところもあるんですけどね。

占星術については詳しくありませんが、
この日と決めてぽとりと生まれ落ちてきた
と考えると、何か因縁めいたものが
あってもおかしくはないな、と思います。

ひやかしで斜めに読んで笑ったり、
この性質を武器ととらえて…と真剣に
読んだりしているうちにいつのまにか
二時間経過。

あっ、ようやく今、名前呼ばれました。



誕生日事典誕生日事典
(2000/10)
ゲイリー ゴールドシュナイダー、ユースト エルファーズ 他

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
久しぶりに書棚から出してきた
村上朝日堂を読んでいたら
こんなフレーズが出てきました。

「僕は神戸育ちなので
 牛肉と海がとても好きだ」

海、という言葉をみて
胸がぎゅっとなりますか?

先日、海辺で生まれ育った友人が
言っていたのですが、
彼女は潮の匂いを感じないそうです。
あまりにも身近だから。
私のDNAには海が刻まれている、と。

また、別の海辺育ちの友人は
頻繁に、海を「補給」しに行くそうです。
しばらく海を見ないと、
だんだん体が萎れていくのだと言います。

海沿いで暮らしたことがない私は
その話にびっくりしてしまいました。

私も海は好きだし、
綺麗な海の色を求めてハワイにも沖縄の
離島にも行ったし。
でも、どうしても必要かと問われたら
なくても大丈夫かも…。

ここが、海のひとたちと私とを
決定的に分かつところなんだそうです。

海のひとたちは、胸の中に
どこまでも青くゆったりとした大海原を
持っているのかもしれない。
そう思うと本当に素敵。うらやましいな。

でも私はコアな森林好きなので
生い茂る緑の木々とかキラキラした小川
とか岩間から流れる透き通った滝とか
湿った柔らかい土とか重なった枝葉の
隙間から透かし見える青空とかそういう、

この話をすると長くなりそうなので
また別の機会に…



 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
針が振り切れる瞬間、というのが
あります。

先日ご紹介した、「箱のはなし」を
読んだときにもそれは起こりました。

読み終わり、本を静かにパタンと閉じて…
好き!と叫ぶ。
そうなった小説は、殿堂入りとなります。

私は常に、圧倒的に美しくて、
かつ自分の想定を軽々と越えるものを
探しているのですが、
その作業の一環に、読書があります。

これまで殿堂入りした小説を
ぱっと浮かんだ順にあげてみますと…

「タタド」小池昌代
「三十歳」長嶋有
「薬指の標本」小川洋子
「道化師の蝶」円城塔
「アイロンのある風景」村上春樹

面白い本と好きな本というのは
全然違っています。

もちろん好きなので面白いわけですが、
そうですね…
例えば面白い話をするひとを
必ずしも好きになるわけではない、
というのと似ている気がします。

タイプっていうのものがありますよね。
ひとには。

よかったら、
あなたの好きなタイプも教えてください。



 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
翻訳家、岸本佐知子のエッセイ集です。

エッセイ大賞を受賞した方だと聞いており
期待しつつパラパラとめくっていると、
胸をがしっと鷲掴みにされる一文が。

「祖母の家に”お泊まり”するのは
 楽しかったが、
 枕の中に日本兵がいるのが
 少し嫌だった」

枕に耳をあてて、
横向きに眠るとそれは訪れる。

降りしきる雪の中、
ザッ、ザッ、ザッ、ザッと
決して乱れることのないテンポで
こちらに向かってやってくる兵隊たち。
怖いようなぞくぞくするような気持ち。

後で、祖母の家の枕が小豆だった、
という事実がぽろりと種明かしされます。

何かひとつ、気になることがあると
岸本劇場の幕があく。
その奇妙なまでの執着。
めくるめくイマジネーション。

塔に住んでみたいという憧れ、
OL時代の独特な風習、
英和辞典で顔見知りになった単語たち。

中でも、ヨコスカさんのこと
というエッセイがものすごく面白いので
おすすめです。

もう、
自分の偏った趣向も控えてきた言動も
隠さなくていいのかもしれない…
という一縷の希望がわいてきますよ。



気になる部分 (白水uブックス)気になる部分 (白水uブックス)
(2006/05)
岸本 佐知子

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
箱が足りない。

国全体が深刻な箱不足に陥り、
政府は国民への義務を決定します。
どの家庭でも、箱を養殖すること。

ある日、サトという女は役所から
20cm四方の水色の箱を支給されます。

毎日、声をかけ光に当て大事に育てると
水色の箱は徐々に大きくなっていきます。
ある朝、箱の蓋を開けると、
小さな赤と黄と緑の箱。産まれたのです。

サトの水色の箱への愛情は膨らみます。
けれど、ある一定数の箱を産み続けた箱は
いずれ役所に引き取られてしまうのです。

とうとう箱の回収を受け入れることにした
サトは、1m四方に成長した水色の箱と
川原へピクニックに出かけます。

別れが悲しく、蓋をとって逆さにし、
サトは箱の中にしゃがみこみます。

漆黒の闇。遥か彼方には星が光っている。
かすかに明滅するものが溢れている。
なにかが産まれようとする気配。

あらゆるものは箱の内側にあったのだ…

箱の中にあるのは宇宙で、
大いなる生命が産まれる場所だという
パラドックス。
その鮮やかで拡がりのある展開に
読みながら魅了されてしまいました。

サトは、箱の中から出ることはなく
遠い宇宙で銀河に生まれ変わったのですが
もし銀河になれるのなら、
私もその箱に入りたい。

そして、遠く瑠璃色の地球をみつめたい。
何万光年も先から。



それでも三月は、またそれでも三月は、また
(2012/02/25)
谷川 俊太郎、多和田 葉子 他

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
今夜は、ほっこり漫画「ちまちま通信」の
作者、ちまちまさんとのコラボ企画です。

先日ブログにてご紹介した、川上弘美
冬一日」について、ちまちまさんとの
対談の模様をお送りしますね。

【つつつ…と涙が出るところを。】

涼:この作品、私これまで70回くらい
  読んでいますが、毎回泣いてます。

ち:私もです。体が反応しちゃうって
  いうか、、
  頭では、ちょっと違う感想があって。
  でも、いつも「つつつ」って
  なっちゃうんです。

  それを自分なりに分析してみよう
  かと思って。
  鼻がじわってきちゃうの、最初の
  句読点なんです。

  文庫本115頁の、3行目からの。
 「ゆっくりと映画をみたり、
  食事をしたり、
  そういうことは、しない。」
  の、そういうことの後の「、」

涼 : すごく、繊細なポイントですね。

ち:それで今度は句読点を考えたんです。

  117頁の、トキタさんの台詞に
  「ゆっくり過ごさないか。
   クリスマス、にも遅いし、
   正月、には早いんだが」
  という独特の句読点がありますよね。

  あれ、いい。

涼 : たぶん、毎年会えなかったその時間を
  思い返しているのでしょうね。

ち:うん。きっと。

涼 : 私は文体はそれほど意識したことが
  なくて。

  冬の、乾いた空気。
  したことのないことを
  初めてする、という緊張。
  なにかが溢れ出しそうな予感と、
  それへのかすかな怖れと。

  122頁の冒頭で、ワインを買って
  戻ってきたトキタさんに
  「おかえりなさい」と言ったときの、
  あの動悸。

ち:わかります、わかります。

涼 : すごく気をつけて会話していたと
  思うんです。これまでの二人は。
  注意深く線をひいて。
  それを越えてしまう瞬間。

ち: 川上さんの小説は、
  全部かけて愛してはいけない、
  そう感じている二人が、
  どこかであふれちゃう、
  その決壊するさまを美しくはかなく
  書いている作品が多いような
  気がします。

【150年生きることにした、という
 トキタさんの台詞。】

ち:実は頭では意地悪な感想を思って
  いたりします(笑)

涼 : どんなでしょう?

ち:例えば、125頁のトキタさんが
  食器洗いなどを細やかに手伝う
  ことについて
  「家ではこんなにしない」って
  いうの、ずっと気になっちゃって。

  多分、あの二人は
  一緒になってもうまくいかないとか…
  トキタさんはそれを何となく察知して
  150年後なんだとか、、

  でもだからこそ、つつつなんだと
  思うんです。
  人っていろんな面があって、
  それでいいと思うんです。

  トキタさんの、
  生活感が出ないように出ないように
  してても出てしまう人間くささ。
  なんか本当にいそうで(笑) 

涼 : 私が感じたのは
  150年生きてあなたと一緒にいたい
  そう真剣に思うくらいあなたのことが
  とてもとても好きなんだよ、と、
  今この瞬間の気持ちを言っている、
  というか…

  うすうす二人ともわかっている。
   現実に二人で暮らしたら、
  それは全く別のものになることを。

  同じ時間、同じ場所での逢瀬から
  何年もはみださなかったのも
  もちろんそれぞれの事情も
  あるでしょうけど、
  今の空気が美しく完結していて、
  壊したくない気持ちがどこかに
  あったのではと。

【深海トークは続きますが…まとめ。】

ち:あ~、恋するって素敵だなぁ。
  誰かを好きになるってこんなに。

  らら~ってしちゃう時も、
  ぐぐって堪えなきゃいけないのも
  みんなあるんだって(笑)

涼:鍋の中の水菜のさみどり色が、
  濃い緑にかわっていくのを
  抱き合いながら気にしているなんて
  素敵じゃないですか。

  一生忘れないシーンになりますよね。


同じ本を好きな方と、
あれこれお話するのは本当に楽しいです。
微妙にひっかかるポイントが違ったり
ぴったりと一致するところがあったり…

ちまちまさん、ありがとうございました。



おめでとう (新潮文庫)おめでとう (新潮文庫)
(2003/06)
川上 弘美

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
ある暮れの一日を描いた物語です。

いつもより少し時間とれるかな。
一人暮らしの弟が不在するので、
部屋の換気を頼まれて。

トキタさんに誘われて、
少し緊張しながら私は頷きます。
いつもは同じ曜日、同じ時間の
ほんの短い逢瀬だったから。

二人は見知らぬ駅で待ち合わせます。
普段よりたくさんの嘘をついて。
お互いに家庭のある身です。

スーパーで買い物をし、
お醤油味の鴨鍋でワインを飲みます。

君、思ったより料理が上手だね
お料理で釣ろうとしてるんだ

普段と違う場所、くつろいだ空気。
鍋から上がる湯気、水菜のさみどり色。
ぽろりとこぼれ落ちる言葉。

いつもこんな風にしてたいね

二人は泣きながら抱き合って
でも笑うのです。

色んなことを強く望まないように
していたことも、
細心の注意を払って、言葉に重みを
のせないようにしていたことも、
本当はずっと一緒にいたいことも、
お互いにぜんぶわかってる。

恋というのは
どうしてタイミングを選ばず
訪れるのでしょう。

どうかふたりが150年生きて、
一緒にいられる日が来ますように。



おめでとう (新潮文庫)おめでとう (新潮文庫)
(2003/06)
川上 弘美

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

 

 
今年の冬は格別に寒いですね。

私の住む街は極寒地なので、
雪の道を歩くと、きゅっきゅっという
音がします。氷点下ノサイン。

風邪を引かれている方も多いと思います。
今夜はお見舞いとして、
ひとつ短編をご紹介しますね。

恩田陸「ふたつの茶碗」

光の帝国、という連作短編集に
入っているのですが
遠く遠くから、不思議な温かい光に
包まれるような物語です。

体調が悪いときって、
あまり本が読めないですよね。

私も久しぶりに風邪薬を飲んで
頭がぼーっとしている中、
楽しみにしていた川上未映子と
明川哲也を読んでみましたが
脳にあるイメージ用の回線に、
真っ白な霞がかかっていて断念しました。

ちなみに多和田葉子と角田光代は
読めました。
クリアな文体であるのと
物語自体、読み手が隙間を埋めなくていい
タイプだったのかもしれません。

もしかするとそれだけでなく、作家が持つ
あるトーンが影響しているのか…

この違いをもう少し検証してみたいなあと
思いながら、
先日みた神社の山茶花はきれいだったなあ
と思いながら、
今日は早めに寝ようかと思います。

みなさんもご自愛くださいね。


 

 

 

 

 
先日のブログで
辞書づくりについてあれこれ書いたところ
友人が、新明解国語辞典に掲載されている
「恋愛」の意味を引くと面白い、
と教えてくれました。

一部で有名なようなのでご存知かも
しれませんが、引用してご紹介します。
*引用部分は「」書き

恋愛。
最新の第七版は、崇高バージョンです。

「特定の異性に対して他の全てを犠牲に
 しても悔い無いと思い込むような愛情
 をいだき、常に相手のことを思っては、
 二人だけでいたい、二人だけの世界を
 分かち合いたいと願い、
 それがかなえられたと言っては喜び、
 ちょっとでも疑念が生じれば不安に
 なるといった状態に身を置くこと。」

続いて第五版は、艶っぽいバージョン。 

「特定の異性に特別の愛情をいだき、
 高揚した気分で、
 二人だけで一緒にいたい、
 精神的な一体感を分かち合いたい、
 出来るなら肉体的な一体感も得たい
 と願いながら、
 常にはかなえられないで、
 やるせない思いに駆られたり、
 まれにかなえられて歓喜したりする
 状態に身を置くこと。」

両者ともうんうん、と頷いてしまいます。
これは意味を書いた方の恋愛観が色濃く
出るのでしょうね。そう思うと面白い。

最後におまけです。涼虫バージョン。

私たちは出会ってしまった、と運命的な
解釈をし、やたらと空を見上げては
この空はあの人の街まで続いている
と甘く胸を痛める。
口角が常に上がり、世界中のひとに
優しくなれるような気がする。
時間感覚が永遠と一瞬の二つのみになり、
相手からの電話を天上から聴こえる
美しい音楽のように感じたり、
鳴らない電話を鉛のようにずっしり重く
感じたりする。

(ああ楽しい、まだまだ書けそう…)



 

 

 

 

 
源氏物語、第5帖。
最愛の女性、若紫との出会いの物語を
名手、角田光代がリメイクします。

遊廓の下働きをして暮らす少女、若紫は、
遠い都から来た大金持ち、源氏に出会う。

初めて源氏に頭を撫でられたときの、
とろけそうなほどの恍惚。
若紫は日々祈るようになる。
私ヲココカラ連レ出シテ。ハヤク。

願いはじきに叶うことになる。

彼女にはわかっている。
源氏が自分を通して、
他の誰かを見ていることを。
自分がそのひとに、そっくり
仕立て上げられようとしていることを。

この男は狂っているのかもしれない。
けれどそれが何だっていうのだろう?

彼女は源氏の前で少女のふりをし続ける。
その他大勢の女の一人にならないように。
注意深く、無邪気を装って。

ひたひたと、妖しく不気味なものに
包囲されていくような怖さを感じます。
逃げ出したいのに許してもらえない。
読み進めるしか選択肢はないのです。

若紫は少女の姿をした狡猾な女で、
目的のためなら手段を選ばない。
一方で源氏からは、得体の知れない
危うさがゆらりと透けて見える。

このふたり、双方の利害が一致している…
それに気づいたとき、
ぞっと背筋が寒くなってしまいました。

恋という名の、
うす桃色の羽衣をぴらりと一枚はぐと、
そこにはどろりとした真っ黒な闇。
ああ。



ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
(2008/10/31)
江國 香織、松浦 理英子 他

商品詳細を見る
 

 

 

 

 
元旦の夜、
来たれ!辞書部という番組をみました。

メンバーは、ピース又吉くん、光浦さん、
文筆家のせきしろ氏など。
マニアックな面々に期待が高まります。

冒頭、逆引きでしばらくメンバーたちが
遊んでいました。
辞書の意味から言葉を当てるというもの。

では、大辞林よりひとつ。

三原色の一つで、晴れた空のような色。
藍(あい)系統の色から、黄みを加えた
緑系統の色までを総称する。
また、公家の染織衣服や襲(かさね)
色目では、緑色を意味する。

目の前にぱっと色が浮かんできましたか?
はい。青です。

イメージから言葉に向かって、
しゅうっと集約されていくのが面白い。

続いて本題です。
言葉をひとつ選び、メンバーがそれぞれ
独自の解釈を披露していきます。

隙 すき

⒈男性が本能的に惹かれる実態のないもの
⒉膝を怪我している女子に抱く感情
⒊不美人に使われる言い訳(隙がない)
⒋服のセンスが少しだけダサい女子
⒌へえ、すご~い、と簡単にいえる様

これは実際考えだすと難しいですね。
日頃の観察力が問われます。

実はこの中にひとつ、涼虫の解釈を
こっそり混ぜ込んでいます。

では、正解者の中から抽選で三名様に…



 

 

 

 

 
彼はいつも彼女に見つめられていた。
春も夏も秋も冬も。晴れた日も雨の日も。

彼は彼女と話がしたいと思っていた。
そして手をとって想いを伝えたかった。

彼の願いは、きらきらとした緑色の鱗や、
ピンク色の手足や長い爪となった。
彼は地中深くから出発した。

彼は彼女の家の中にそっと入っていった。
驚いたことに、彼女は彼をみて怯えた。

あなたが子供の頃から一緒にいる
庭の椎の木ですよ、そう伝えても
彼女の怯えと混乱は増すだけだった。

彼には彼女の思うことがすべて聴こえる。
それが彼女の強い怒りを買うようだった。

彼女は心の中で彼を激しく罵った。
そして何度も残酷な仕打ちを想像した。

そんな不気味な獣のかたちをして
私に求愛するなんて身の程を知れ。

そのたびに彼の胸はくちゃ、とつぶれた。
きらきらした緑の鱗が紫に変わっていく。
耳から薔薇の匂いがするガスがもれる。
自分がだんだん小さく目減りしていく。

ああ、想いはかなわないのか。

…実はこの原作、女の視点で描かれて
いて、もっと残酷でシュールなんです。

緑色の獣のひたむきさとグロテスクさの
相入れない感じが切なく、
ついつい肩入れしてしまいました。

もし気が向いたら、
読み比べしてみてくださいね。



レキシントンの幽霊レキシントンの幽霊
(1996/11)
村上 春樹

商品詳細を見る
 

 

 

 

 
今よりずっと先、西暦三千年の東京。

風の音がする。
この辺りにはまだひとが住んでいる。

今日は魚をとった。
小さいものは岩場に干すことにする。
飯をうすく炊いて、甕の水をのむ。

遠くに見える東京タワーはきれいだ。
一日かけて歩いて、近くまで行ったら
朽ち果てていたけれど。

近しいひとが訪ねてくる。
彼と会うのは3日ぶりか、7日ぶりか。

日にちを数えることや
言葉をしゃべることをやめてはならない。
そういわれたことを私は思い出す。

今日は一年の新しい一日なんだよと
彼はいう。
おめでとう、私たちはささやきあう。

千年の間に、何が起こったのでしょう。
人々は文明から遠ざかり、
原始の暮らしに戻ってしまったかのよう。

もしかすると、この星が生命活動の
縮小をはじめていて、生物たちも
ゆっくり退化しているのかもしれません。

赤い入り日をずっとみていたり、
近しいひとと抱き合ったり。
出来事の輪郭がぼんやりしています。
そしてまもなく、
言葉さえも失おうとしているのです。

けれど生きている。
昨日も今日も、たぶん明日も。
ただ、ここに存在しているということの
貴さを感じます。

おめでとう、という言葉のもつ深さ。
新しい年を大事なひとと迎えられる奇跡。

心から濁りがすっとぬけていく。
新年にふさわしい一編です。



おめでとう (新潮文庫)おめでとう (新潮文庫)
(2003/06)
川上 弘美

商品詳細を見る
 
テーマ * オススメの本 ジャンル * 本・雑誌

 

 

*Template By-MoMo.ka* Copyright © 2013 涼虫の読書案内, all rights reserved.

涼虫(すずむし)

Author:涼虫(すずむし)

本の虫、涼虫が読書案内いたします。

本がお好きな方、読みたい本を探している
方のお役にたてると嬉しいです。
ときどき自由に書いてしまうことも
ありますが、どうぞおつきあいください。
リンクについてはご一報いただけると
幸いです。また、すべての画像、文章、
データの複製・転載をお断りいたします。

ブログランキング・にほんブログ村へ

\ランキングに参加しています/

あ行の作家 (62)
明川哲也 (1)
朝倉かすみ (1)
安部公房 (1)
伊坂幸太郎 (5)
石田千 (1)
伊藤たかみ (1)
絲山秋子 (9)
井上荒野 (9)
茨木のり子 (1)
江國香織 (14)
円城塔 (2)
小川洋子 (5)
小山田浩子 (5)
恩田陸 (7)
か行の作家 (35)
角田光代 (7)
金原ひとみ (1)
川上弘美 (14)
川上未映子 (5)
岸本佐知子 (2)
北村薫 (1)
木村紅美 (1)
窪美澄 (1)
栗田有起 (1)
小池昌代 (2)
さ行の作家 (11)
斎藤隆介 (1)
桜庭一樹 (5)
柴崎友香 (1)
島田雅彦 (2)
島本理生 (2)
白石一文 (3)
瀬戸内寂聴 (1)
た行の作家 (4)
谷川俊太郎 (2)
津村記久子 (2)
な行の作家 (18)
中上健次 (1)
中島らも (1)
中村文則 (2)
長嶋有 (8)
梨木香歩 (6)
西加奈子 (3)
能町みね子 (2)
は行の作家 (14)
林真理子 (1)
東直子 (3)
東野圭吾 (1)
平野啓一郎 (1)
藤野可織 (4)
辺見庸 (1)
穂村弘 (2)
堀江敏幸 (1)
ま行の作家 (57)
益田ミリ (1)
枡野浩一 (1)
町田康 (4)
三浦しをん (6)
みうらじゅん (1)
宮本輝 (2)
村上春樹 (30)
村上龍 (8)
本谷有希子 (1)
森絵都 (2)
森博嗣 (1)
や行の作家 (23)
山田詠美 (2)
山崎ナオコーラ (1)
山本文緒 (1)
吉田篤弘 (1)
柳美里 (1)
吉田修一 (1)
よしもとばなな (16)
未分類 (10)
ビジネス書 (20)
エッセイ・コラム (22)
コミック (7)
雑誌 (4)
涼虫の… (69)
コトノハ・リサーチ (36)
気分で、短編。 (19)
書店をめぐる (14)
読書について (50)
深海で待ち合わせ (5)
徒然 (128)
虹を渡る (17)
活字にしたい映画 (1)
スターバックスにて (12)
箱のなか★ (9)

名前:
メール:
件名:
本文:

このブログをリンクに追加する

この人とブロともになる

QR

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。