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今週は平日一頁も本が読めず、
今夜は珍しくライブに行き酸欠になって
読めず(ライブは素晴らしかった)
明日はゆっくり読むことを自分と約束した
夜更けです。

さっき何処かのサイトで読んだのですが
「指きりげんまん」という言葉の由来は
江戸時代、遊郭の遊女が本気で好きに
なった男に、自分の左の小指を切って
贈ったところからきているのだそうです。

ひゃぁ。愛って過酷ですね。

さっき、ここ何年も反故にしていた
自分との約束の旅をようやく叶えることに
しました。

きっかけは、今朝YouTubeで観た
スティーブ・ジョブズのスタンフォード
大学卒業式のスピーチです。

あなた方の時間は限られています。
だから、本意でない人生を生きて
時間を無駄にしないでください。

あなた方の心や直感は、自分が本当は
何をしたいのかもう知っているはず。
他のことは二の次で構わないのです。

二度、繰り返し観てから
後回しにしていることがないか、
いつか行こうと思っている場所はないか、
総点検してみました。

一個ずつ叶えていこうと思ったんですよね
まずはできることから。



 
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先日、相棒というドラマで
外国の工作員の男が、日本で自分が
騙していた女に手紙を残すシーンが
ありました。

突然の帰国命令が出た
理由はわからない、私の国はそういう国だ
だから私は難しいことは考えない
しかし、君は難しいことを考えていい国に
いる
分からなければ調べてもいい国にいる
だが、君は私との愛があれば、
難しいことは分からなくていいと言った
難しいことを考えられる幸福より、
愛に溺れる快楽を選んだ
そんな君を、私は心の底から愚かだと思う
そんな君を、私はずっと嫌いだった
これからもずっと嫌いだ

ひどく冷たくて辛辣で、でもきっと
これはラブレターなんだろうなと
心がぶるぶる打ち震えたわけなんですが。

ひとはある程度、考えることを免除される
仕組みの中で(例えば雇われるとか
結婚して役割分担する等)生きていると
思うのですが
自分がどれくらい物事を考えたいか、
どれくらい何も考えたくないかで
選ぶ相手や生活スタイルが全然変わる
のだろう…と思い巡らせてしまいました。

ここしばらく、
鎖のついた重い鉄の足枷をつけて
ずりずり歩いている気分だったのですが、
仕事に忙殺されて、物事を考える時間が
確保できないからだ、と気づきました。

神様、それだけは困るんです。
考えるという自由だけは。



 
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その女は、薄曇りの湿った空気の中
低い空を飛ぶ鳥のようだと思った。
行き先も目的もなく、
乾いた目を時折しばたかせて。

主人公であるわたしと共に暮らしはじめた
あなたは、母が突然亡くなったあと
この家にきた。

わたしはいつしか爪を噛むようになった。
あなたはわたしが爪を噛まないように
ジャンクなお菓子をどんどん与えた。

あなたはわたしに感心がなかった。
優しくも冷たくもなく、ただ一緒にいた。
というより、あなたは何に対しても
感心がなかった。

幼いわたしから見たあなた、父の恋人
である女の姿が、抑揚のない淡々とした
口調で語られます。

その女が無意識のうちに漂わせるのは
ある種の低い周波数。
おそらく虚無という名の。

女の描写からは
活力というものを徐々に抜かれるような
雨に濡れた服が気持ち悪いけれど、
もうどうでもいいや、というような
気持ちにさせられます。

そして、彼女にふらりと引き寄せられる
男たちをみていると、ひとは明るく輝く
ものだけに惹かれるわけではない
ということに改めて気づくのです。

そんな塞がれたような日々の中で
幼いわたしが受ける深い傷、
けれどそれでも伸びていこうとする力が
せつなく映ります。

…読み終わると、いつのまにか自分が
グレーの厚い膜に覆われていることに
気づく。
たまらない閉塞感に、
思わずきつく爪を立てそうになる。



新潮 2013年 04月号 [雑誌]新潮 2013年 04月号 [雑誌]
(2013/03/07)
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柴崎友香の書く文章は水のようです。

当たり前のような日々が続き、
さざ波のような感情が行き交います。
その中に、きらきらと光る雫や
淡いグレーの澱みが確かにあって
胸の中に残るのです。水彩画みたいに。

昨日行ったライブで難聴気味になった
主人公の私が、彼氏の友達の彼女で
七つ年下のみーこと、何となく過ごす
夏の終わりの午後。

縁日に行こう。

風をきって自転車で坂道を降りるときの
流れていく景色。
白のテントで作られた急ごしらえの店、
ブルーシートの上に並ぶ陶器や着物。

みーこがきれい、と手に取ったのは
薄緑色の気泡が入ったガラスの器でした。
買ってあげようか?私がいうと、
いらない、
どこかにあるって知ってるだけでいいから
と、みーこは答えるのです。

ああ、わかるなあ、この感じ。
きれいなものって手に入れたくない
もののほうが多い。

縁日からの帰り道、ある再会によって
主人公の脳裏に蘇る、過去の奇妙な体験。

そこからは、潮の香りがする場所まで
身体ごとあっという間にさらわれて
しまいます…



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(2010/04/20)
クラフトエヴィング商會、石川美南 他

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私は猫が好きなので、よく猫エッセイを
読みますが、町田康のものは特別です。

猫に対する姿勢が実に真摯なのです。

自宅で買う猫と、仕事場で保護団体から
預かる猫、計9匹と暮らす著者は
家人と強力しあい、献身的に猫に
接します。

献身的というと美談のようにきこえて
しまいそうですが、
かけがえのない命を預かり、ともに暮らす
という視点の彼らにとっては
猫に対して真摯に接することは
ごく当たり前の、自然なことなのです。

今の地球上では、ヒトは、他の動物よりも
優位な立場にいるようになっているけれど
その感覚自体を疑う機会になります。

と、固く紹介してしまいましたが
エッセイの中では町田康・神の筆致が
存分に楽しめます。

クラシカルで流麗な日本語で、
延々と続く妄想や仕事をさぼる言い訳、
猫たちがのたまう台詞などが
縦横無尽に書き連ねられ、
おもしろきことこの上なしです。

このひとの文章からは、なぜか
天井がない印象を受けるのですよね。

猫達はどの子も個性的で、独立独歩。
写真がついているので、文章と写真を
行ったり来たりしては
この子がエルかーちっちゃいなあ、ふふ
とぶつぶつ呟く自分にはっとしたり。

ついさっきまで家猫、ゲンゾーの章を
読んでいて、心がひたひたに…

まだ目の奥に水たまりが残っています。



猫のあしあと (講談社文庫)猫のあしあと (講談社文庫)
(2012/12/14)
町田 康

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すっかり部屋でくつろいで、
読みたい本をばさばさっと積みあげて
ブランケットにくるまって眺める。

何読もう?何読む?

という幸福な週末の夜を過ごしています。

今日は金曜日だから、
覚醒系クリエイターのを読んだっていいし
康先生のねこエッセイでゆるむのもいい。
それとも梨木ワールドにダイブしようか。

私は今まで何冊くらい読んだのかなあ。
その欠片は私の中に残っているのだろうか
…と想像したり。

私が本を読む理由は、多分飽きっぽいから
なんです。
身体の中に空っぽの箱があって、
とにかくこの箱をひたひたに満たしなさい
感覚的なものでもいいし、知的なものでも
いい。
そう、私というより箱が求めて…
(箱モチーフ、最近好き)

あれ、このフレーズ
平野啓一郎の「空白を満たしなさい」
に影響を受けてるな。未読なのですが。
いいタイトルですよね。

あっ…どうしよう。
眠くなってきちゃった。



 
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昨日、僧侶の方が書かれた文章の中で
初めて此岸という言葉を知りました。

彼岸の向こう側、
私たちが住んでいる世界のことです。

お彼岸が、昼と夜の長さが同じ日と
されているのは、腑に落ちるような。
空気が均一になる瞬間に架けられる橋。

その橋は象牙色の石でできており、
水の上に美しい曲線を描いているのでは
と想像します。

私たちは此岸で欲や煩悩に振り回されて
生きていますが、ちょっと手を休めて
俯瞰してみると、全てが移ろっている
ことがわかります。

いいこともそうではないことも。
この世の春のように嬉しいことも
立ち上がれないくらい悲しいことも。

何事も留まらず、形を変えて流れてゆく。

そしていつか、誰もがみな象牙色の橋を
渡る日が来る。

そう思うと、いろんなことを許せたり
手放したりできる気がするのです。
そもそも自分を縛るものなど何もないの
だと。

かくいう私の今日は、実に此岸的な一日
でしたが、
ただいま浄化中につき…



 

 

 

 

 
この一冊の中には、
アートディレクター、佐藤可士和に対して
仕事における質問、それに対する答えが
Q&A形式で書かれています。

世の中をどう見ていますか?
やりたいことを仕事にするには?
いい仕事を続けるために大切なことは?

印象的だったのはこんな言葉です。

自分の軸は高速回転する駒のようなもの。
自分の考えを常に疑い、興味の幅を限定
せず多角的にみて、常に思考の軸を
メンテナンスしている。

この思考の軸。
例えばひとは過去の経験から軸を修正して
いく場合が多いと思うのですが
成功体験が増えていくと回転をやめ、
軸を地面に突き刺してしまいがちだなあ
と感じます。

時代は動いているものだから、同じように
自分も感覚を研ぎすませて動き続けること
が大事ですね。(精進あるのみ)

また、決断が早いことで有名な著者ですが
そのために必要なことは?という問いに
常に心身のコンディションを整えること
と答えています。

わかる!体調が悪いと判断が鈍ります。
私も寝不足の日に、仕事の相談事を
持ちかけられると一旦フリーズします。
(考えているふりは上達の一途を辿る)

成功しているひとの徹底した仕事ぶりから
吸収できることは本当に沢山あります。

優れた仕事の手法を自分で編み出す時間を
考えたら、既にそれを持っているひとの
本を読んで実践するほうが早いですよね。

さあ休み明けから実践実践。



佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか? (宣伝会議)佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか? (宣伝会議)
(2012/12/25)
佐藤可士和

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一流と呼ばれるクリエイターの人々が
まだ何者でもなかった若い頃に思ったこと
影響を受けたもの、転機、出会い、
現在の仕事。これからやりたいこと。
それらを一部は独白で、二部では対談で、
三時間語り尽くすという企画ものです。

職種はさまざま。
アートディレクター、作家、演出家、
映像クリエイター、映画監督。

才能溢れる人々なので、情熱に向かう力が
並大抵ではなく、それがこの人々の
細胞のひとつひとつを形づくっている
のでは…という圧倒的な印象を受けます。

クリエイトするというのは、自分の持つ
過剰なエネルギーをただ放出するのでは
なく、時代の空気を敏感に肌で感じ、
特殊な変換コネクタを使って世間に
形として差し出すものなのだなあ、
と感じます。

誰の章でもざわっと鳥肌が立つ瞬間が
あるのです。
感情が光射す方向にわぁっと波打って
一回本を置いて涙ぐんだりして。
(激しく感極まっているという状態)

中盤の大宮エリーの章まで読み進んだとき
脳みそ、悩み、という言葉の列を見て
うわっ右側の形一緒だ、生まれて初めて
気づいた。
という、実に些細なことですが普段は
見えなかったものが見えてくるという
現象が私にも起こりました。
脳が開く…喚起されるというのに近い
かもしれません。

効率的に、順番に、やるべきことから先に
という脳の中を整列させ行進させるような
ことを優先させている場合(つまりそれが
生活というものなのですが)
鍵をかけておくほうが都合がいい重い扉が
あるとして、
この一冊に書かれているすべては、
その扉を開ける鍵です。

鍵は虹色に光っています。暗闇の中で。



劇的クリエイティブ講座劇的クリエイティブ講座
(2009/09/03)
佐藤 可士和、川上 未映子 他

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ワイングラスの透明な群れが、
間接照明のやわらかな光を受けて
ぼんやりと浮かび上がる。
向こう側は一面の夜空。

ここはビルの九階にある、
ひっそりとしたワインバーです。

細いグラスからシャンパンの細かい泡が
一筋、あがっていくのを見ながら
きれい、とつぶやくと
涼虫さんよく使うよね、その言葉。
と友人にいわれました。
自分では全然気づかなかったのですが。

ひとの口癖は、たぶん日頃焦点が
あたっていることとリンクしているの
でしょうね。

確かに、物心ついてからずっと、
病的にきれいなものが好きだな…
という自覚はあります。

蛇口から出てくる透明な水、ふわりと
夕空を舞うシャボン玉、スプリンクラーが
作るキラキラした虹。そういうものを
じっとみている子供でした。

そのうちにナッツとドライフルーツが
散りばめられたお皿が運ばれてきて
うっとり。

マスターがシャンパンの蓋で椅子を
つくってくれて、感嘆詞。

ひまわりのような笑顔を持つ友人も、
今夜はとろりと月の女神のように
微笑んでいます。

ワインバーなんて滅多に行かないのですが
たまに、現実を忘れるくらい静謐で、
美しい空間に身を預けるというのは
いいものですね。

心が透明になっていくのがわかります。



 
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主人公、Kは、狭い箱の中が苦手です。
日常生活に支障をきたすほどに。
例えばエレベーターの中、トイレの中。

友人の紹介で、とある心理学博士の女性の
元を訪れたKは、彼女から、二週に一度
友人としてお茶を飲んで話をしましょう、
という提案を受けます。

Kはこれまで誰にも言えなかった悩みを
博士にぽつぽつと語ります。
なぜ狭い箱にいるとたまらなく居心地が
わるくなったのか。そのきっかけ…

半年ほど過ぎた頃、博士はいいます。

Kさん、その恐怖をなんとかするために
してみたいことが何かありますか?

狭い箱に閉じ込められている自分を
つくりたい。

その次に博士のもとに訪れたKは
画用紙と紙粘土で、五センチ四方の箱の中
にいる自分の姿をつくり、
手のひらに載せて長い間じっと眺める。

Kはいいます。
これは箱ではない、「ぱこです」…

以前私が、ひどい気管支ぜんそくになって
毎日点滴に通っていた頃
看護師さんが左腕に点滴の針を刺して
くれる瞬間に、ああ、これで大丈夫だ
と涙が出るほどほっとしたことを
思い出します。

心身のどこかが著しく炎症しているときに
プロである第三者に、大丈夫だよと
見守られている安心。

物語の彼女は、ぱこを作り続けることで
きっと自分の中の狭い箱から出られるの
では、と思うのです。



短篇集短篇集
(2010/04/20)
クラフトエヴィング商會、石川美南 他

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賢い箱があるという。

それは名文をつくる文箱で、書いた文を
入れて寝かせておくと、文意のままに熟成
し、作為のあとをきれいに消してくれる。
下手な恋文を入れておくのに最適という。

皆こぞって箱を欲しがる。
箱の価値はぐんぐん上がってゆく。
けれどいわくつきで、その箱を持つと
不幸がついてまわるという話もある…

箱は様々な人々の手に渡っていきます。
それを長い間探し求めてきた者、
贈り物として受け取る者、
思いがけず遺される者、
発見し算段する者。

物語はふつっと糸が切れるように
場面転換を繰り返します。
裏切られたような違和感を感じながら
形となっていく疑念。
この箱は生きているのしれない。

箱はひとの思念をまるごと飲み込んで、
じわりじわりと発酵していく。
蓋に耳を当てたら誰かの囁きや叫び声が
聴こえそうなほどに。

狂ふべき時に狂わず花は葉に

物語の中で詠まれる句の持つ、桜の無念が
私をさらなる闇へといざないます。

重い雲が垂れ込めた真夜中、誰もいない
野原で満開の桜が微かな風に揺れている。
手招きされているようで、ふらふらと
その妖しい美しさに手を伸ばす。
そうしながらも私を知っている、
この桜は腐っている…

そんな瀬戸際の危うさに捕らえられた私は
もしかすると文箱の中で
長い夢を見ているのかもしれません。



短篇集短篇集
(2010/04/20)
クラフトエヴィング商會、石川美南 他

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この人の書く物語を解説するのは難しい。

頭の中を通過する、とりとめのない疑問や
発想や思考の中から、ひとつ焦点を
しぼってエッセイにするひとは多くいる
けれど
このひとはそれを小説にしてしまう。
流れていく思考の、ある一点から別の一点
までを切り出して。そんな風に思える。

だからなんというか、応戦はできないから
委ねる、という読み方になる。
それで、好きだなと思ったのがこの物語。

ゾウリムシの進化の研究をする主人公で
あるわたしは、実験対象についての
あらゆる議論をはじめる。
遺伝子は変異を繰り返す。種とは何か。
輪廻とは。魂の数は保存されるのか、
魂や生き甲斐は宇宙と一緒に湧いて
出てきたのか…

議論はつかみどころのない旋律のように
方々を彷徨う。

そしてわたしは、実験の中で死ぬ間際に
緑色に光る遺伝子を導入する。
その変異体にgedatsuと名付けてみる。
するとさらなる変異体が現れ、
死に際の発光を定期的に繰り返していく
ものが出てくる。

蛍のように淡く緑色に光る発光体。
それを眺めるふたり。

クールに、学会の質疑応答のように
進んでいく物語が行き着くのは、
生命そのものが持つ艶かしさ。

捧ぐ緑というタイトルが、
最後にぐっと効いてきます。



バナナ剥きには最適の日々バナナ剥きには最適の日々
(2012/04/06)
円城 塔

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この世で一番好きな場所は台所だと思う。

ある日、祖母を失くして天涯孤独に
なってしまった女の子、みかげが
田辺家の人々に出会い、奇妙な同居生活を
送りながら、深い孤独から次第に力を
取り戻していく…という物語です。

人の孤独には段階があって
本当に立ち上がれないほどのレベルに
いるときは、青空ですら眩しい。
それと同じように明るすぎるひとと
一緒にいるのは落差を感じてきつい。

適当に放っておいてくれて
けれど確実に、そばにひとの気配や
温かみを感じる。
そういった距離に田辺家の人々は
いるのです。ただ自然に。

夜中に一緒にジューサーで
ジュースを作ったりしながら。

女になった田辺雄一の父、えり子さんは
言います。

人生は本当にいっぺん絶望しないと、
そこで本当に捨てられないのは自分の
どこなのかをわからないと、
本当に楽しいことが何かわからない

ひとは自分のことって意外と知らなくて
絶望や希望を抱くことで
自分という枠の大きさを感じられる
のかもしれない、と思うのです。

ああ、いま私、一番底にいるなあ、
でもきっと、これからは上がるだけ
なんだろうな。
そんな気持ちが心に訪れるとき。
締め切った部屋にどこからか
流れ込んでくるやわらかい風。
そういうものが、ここには描かれている。

ふと顔を上げて、甘く青い空を見上げたく
なるのです。



キッチン (角川文庫)キッチン (角川文庫)
(1998/06)
吉本 ばなな

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咲きこぼれる梅の花にそっと顔を
近づけると、春の匂い。

梅の花はぽってりとして妖艶で、
好きになったのは大人になってからです。

満開の梅の中を歩きながら、ほわりとした
いい気持ちに包まれました。
あ、多幸感。

長い冬のこととか、先の見えないこととか
がちがちに固まっていた閉塞感のような
ものが、ゆっくりとほどけていく。

春になると身体の内側から、抑えきれない
ほどわくわくしてくる。
細胞のひとつぶひとつぶが歓びに
泡立つのを感じます。

ひとも植物も四季のリズムで生きているの
ですね。

さて、旅から戻って日常です。

今朝起きて窓の外をみると、しんしんと
雪が降っています。
それは見事なほどの銀世界。

あのね、もう春なんですよ。
わかってます?
と、空に言ってみる。

さて、菜の花のパスタをつくろ。
お気に入りのクリーム色の器に、
菜の花の緑はきっと似合う。

オリーブオイルにニンニクの香りを
じっくりうつして…



 

 

 

 

 
今日は対談編。
恩田陸「夢違」をお送りします。
深海で待ち合わせしてくださったのは
長くお付き合いさせてもらってる
読女友達の、えそらさんです。

1.夢札について


夢札、ひいてみたいですか?


ひいてみたいです。
よくみる夢があって、
校庭みたいな広い場所に白線でなにか
図のようなものを描いているんです。
空は雲ひとつない青で、多分夏で。
妹とその彼氏がTシャツ着て笑ってる。
その夢を巨大スクリーンで観てみたい。


私は夢を映像でみたいというよりは
希望を夢で叶えたいですね。
だって、世の中、ままならないことの
オンパレードでしょ。
と、言いながら思ったのだけれど、
どんな夢を見たいかを考えることが、
望みを明確にすることなのかなって。
自分の心を見つめること、大事ですよね。


夢ってやっぱり、現実で叶っていない
部分は叶わないまま出てくることが
多いですものね。
望みを明確にすること…確かに!
眠りの中の夢と覚醒しているときに
描く夢は、もしかすると回路で繋がって
いるのかも。

2.奈良、吉野について


学生の頃以来、行けてないんですよね。
この小説を読むと、法隆寺、蔵王堂、
吉野の桜…時間を忘れて巡りたくなる。


私も、吉野の桜は見てみたいです。
儚げな、でも、心をしっとりさせる光景に息を呑むだろうなぁって、
想像しちゃいます。
夢違観音にも興味があります。
少し調べたのですが、何か物語を持って
いそうな観音様です。


悪い夢をいい夢に変えてくれる、
夢違観音様。慈愛に満ちたきれいな
お顔してますよね。

3.恩田陸の想像力


この方は毎回色んな題材をぶわーっと
膨らませますよね。
夢って実在していない分、どこまでも
美しくも怖くもなる。その振り幅を
存分に使ったんだなあ、と思いました。
何より言葉がきれい。夢札、夢殿、
夢違観音。


私も、彼女の想像力に脱帽です。今回も、
この先はどうなってしまうの?という
気持ちで読み進めました。
さて、小野小町の歌や源氏物語の六条
御休所を思い出してしまったのは、
私だけでしょうか。それとも、作者の
策略でしょうか…。


きっと、六条御息所が夕顔の元へ通った
通路をこの物語は描いている。
そう思うと千年の物語という言葉が
浮かんできたりして。素敵ですよね。


…今回は深夜のしっとりしたバーで
楽しく対談させていただきました。
えそらさん、ありがとうございました。


夢違夢違
(2011/11/11)
恩田 陸

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この世に想いを残して去った人々が
ある無機物にとりつくことを係に認められ
そこからもう一度現世をみつめていく。

物語はすでに無機物となった主人公の
視点で語られていきます。

とりつくしまに何を選ぶか。
それはひとによって実に様々です。

恒久的に大事なひとの身近にあるもの、
ある季節にだけ使われるもの、
一度きりでなくなってしまうもの。

白檀、という物語で桃子が選んだ
とりつくしまは、何十年も前に書家の
浜先生に差し上げた中国の扇子でした。

16歳のときに深い青の絣を着た先生に
出会ってから、どうしてもまた会いたくて
懸命に書の修行を積み、大学を中退し、
先生の元に弟子入りした桃子。

けれど先生の奥様のことも大好きで、
恋心を固く胸に秘めたまま去った桃子。

誰もが穏やかで慎み深く、
淡く静かに日々は続いてゆくけれど
想いは空気に滲み出る。
白檀の香りがふっと漂うように。

先生は夏になると私をそっとひらく。
そして私は先生のためにやわらかな風を
おこす。

なんと艶かしい。

もし私がとりつくしまを選べるなら
ロージンという白い粉のように
一度きりのものにするかもしれません。

大事なひとときちんとお別れをするために
その機会を使うと思うのです。



とりつくしま (ちくま文庫)とりつくしま (ちくま文庫)
(2011/05/12)
東 直子

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今週末、 東京国際文芸フェスティバルが
開催されていました。
残念ながら早稲田大学などて開催していた
講演は締切後で参加できなかったのですが
新宿伊勢丹で、朗読会のイベントがあり
いってきました。

ゲストは歌人の東直子さんと穂村弘さんの
お二人。交互に詩や歌を朗読します。

目の前の穂村さんに違和感。
すごく変わったひとだと思っていたせいか
あれ?すっと背が高く、洗練されてて
かっこいいんですけど…

穂村さんの短歌の朗読の中で、私の好きな
降りますランプが。感激もひとしおです。

東さんの、小説を関西弁で読み上げて
いるのもよかったな。音楽みたいで。

お二人とも声がいいので、目を閉じて
ずっと聴いていたい感じでした。

私は短歌を習ったりサークルに入ったり
したことがなく、ディープな短歌好きの
人々が集う空間が初めてだったので、
外側から人間観察してみたり。

感性にライブで触れるという至福を
味わう夜でした。

ことのはが私の耳を脊髄をとろりと溶かし
めぐりめぐりて(涼虫)



 

 

 

 

 
下北沢、書店B&B。
東直子さんの小説「とりつくしま」
舞台化トークイベントに行ってきました。

物語は、死後の世界でとりつくしま係に
声をかけられたひとは、ひとつだけ
この世の無機物にとりつくことができ、
そこから世界を眺める…というもの。

例えば白檀の扇子に。マッサージ器に。

舞台は、東さんの短歌を織り交ぜたもの
になるようで、演出家の眞鍋卓嗣さんが
話していた言葉が印象的でした。

空気中にふわふわと無数に浮かんでいる
「想い」を捕まえて名前を与える行為が
短歌なのでは。
そして、声に出して読み上げることで
形になり、生きた物体となる…

イベントの中で、実際に役者さんが
短歌を朗読するパフォーマンスがあり、
遠い世界に連れていかれたような
気分になりました。

今まで演劇は苦手だと思っていたのですが
原作者、演出家、音楽担当、役者といった
作り手の方々の顔ぶれをみながら話を
聞いていると、極彩色の建造物が
目の前に立ち上がってくるようで
奇妙なくらいドキドキしてしまって。

イベントの後、書店の中を巡回しました。
こじんまりしたスペースですが、
ディスプレイの仕方、ラインナップに
並々ならぬセンスを感じました。

後でゆっくり、とりつくしまを読み返そ。
サインしてもらったんです。ふふ。



 

 

 

 

 
朝起きたときにふと思い浮かぶ言葉を
一行だけ書く、
あさいち日記をたまにつけています。

夜眠って一応頭の中がオールクリアに
なったところで浮かんでくる言葉だから
純度が高いように思うのです。

今日から残業禁止ね、とか
初夏の奥入瀬渓流にいきたい、とか
自由は全然楽じゃない、とか

朝からよくこんなディープなことを…
と思うようなこともあるのですが
たまに無風の、凪いだ朝があります。

何も言葉を思いつかないのです。

私は幸せというのは、幸せについて
考えていない状態だと思っているので
何も思いつかないとき=欠落感がない
ということなんだな、と。

シーソーが奇跡的に並行を保つように。

じゃあどうやったら、朝起きたときに
凪的瞬間を迎えることができるのか、
検証してみました。(こういうの好き)

まず睡眠時間を6時間以上とっていること
それから前の晩、お酒やカフェインを
とりすぎていないこと。
オンオフ含め忙しくしすぎていないこと。
意外にフィジカルな要素が強いという
結果でした。

今朝は風速10メーター強。
浮かんだ言葉はなかなか切実で。

物言わぬ花になりたい。



 

 

 

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涼虫(すずむし)

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