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夕暮れに間に合って、久しぶりに
大きな池のある公園を散歩しました。

新緑のイチョウがモザイクのように
金色の光を含んだ青空を切り取って
いました。

柳の新芽が微かな風に揺れて、夕空を
映した池に落とす影。

旬、という言葉が頭に浮かびます。

それは過ぎて行く時間の一瞬なので
網膜に刻むような気持ちでみていました。

とすると、網膜に刻まれた記憶というのは
そのひとにとっての旬、なのかも
しれません。

映像作家はそれをフィルムに焼き付ける、
小説家は物語という形で再構築する。
受け手は喚起されてその場所に立つ。

生きているうちはずっと旬だと裏付けて
と椎名林檎がいつか歌っていました。

あの曲を聴くと作り手がどんなに透明な
場所にいたかよくわかります。

旬というのは、ある永遠なのでしょうね。



 
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あまり整然と暮らしていると
自分に勢いがなくなってくるというか
力が出にくくなるなと、と感じます。

ヒトも動物なので、ある程度
野生の力のようなものを持っている
必要があって、それは勘や危険察知と
いうところで生きてくるように思います。
情報だけに頼らず身体で感じるもの。

しばらく小さくまとまっている自分に
風穴をぷつ、と開ける方法を考えていて
思いついたのが、
たとえ日々のほんの小さなことでも
やりたいことを可能な限り通す、
というもの。

管理しすぎず、整頓しすぎず。

それで今日、
平日は近くのジュンク堂にいくところを
少し遠い紀伊國屋まで足を伸ばしました。

紀伊國屋はシックなレイアウトなのが
いい。
棚が低めで空間に広がりがあるところも。
しばらく探していた本をパラパラ…

たったそれだけなんですけど、
少しだけ視界が明るくなったような気が
しました。

外はつややかな新緑で
やわらかく甘い風が吹き渡っていきます。



 
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突出した才能を持つ人がよく呟く言葉に
私はこれしかできないから、というのが
あります。

江國香織もマツコ・デラックスも壇蜜も。

いつもこの言葉をきくと、わからなく
なるのです。
どこまでができる、で
どこからができない、なのか。

沢山のことをそこそこにできるひとは
分母が大きいということなのか。
全員か持つ才能の総数を等しく1として。

二十分の一を二十個持つひと、
三分の一を三個持つひと、
または分母すら持たないただの一という
ひと。

私はこれしかできない、その言葉を聞くと
一瞬身体が硬直して、わけのわからない
汗が出てきて頭がぼうっと熱くなり
胸に草色の苦い痛みが走るのです。

それを人は強烈な羨望と呼ぶのでしょう。
ええ、わかってはいるのです。

分母が大きいことは安定をもたらす。
けれど、バランスがとれればとれるほど
遠のいてゆくものがある。



 

 

 

 

 
主人公の私は、しばらく疎遠になっていた
小学校の友人宅に招かれます。

今これに夢中になってる、と友人に
見せられたのは「強震モニタ」という
日本列島の地震の揺れをリアルタイムに
色で表示するサイトでした。
いつだって大地震の前なんだよ、
彼女はいうのです。

ふたりで向かいあって餃子を包みながら
ぽつぽつと話をします。それぞれが
歩んできた全く別の人生のこと。

友人に敷いてもらった布団の中で
私は眠れない時間を過ごします。

毎日仕事から真っ直ぐ帰ってきてずっと
強震モニタをみてる、という
昔からおたくでマイペースだった友人が
自由でうらやましい。

隣りに見栄えのいい男がいることや
雑誌に載っているような暮らしをすること
身体や肌をぴかぴかに磨くこと
Facebookでの充実している自分アピール
素敵な女とはこうあるべきという指標。
暗黙の重圧。轍の存在。

それをなぞることに価値はあったのか…

実は世間からのプレッシャーというのは
言い訳で、本当は自分が自分を縛っている
ことに主人公は苛立っている。

その気持ちがわかりすぎるほどわかって
心の中にざあっと突風が吹き荒れました。
自由になりたい。

鈍色をした解放の鍵がこの物語の中に
ある。もう一度読んだら、それを
手にできる予感がするのです。



忘れられたワルツ忘れられたワルツ
(2013/04/26)
絲山 秋子

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大学生の風花が帰省した実家で、
姉はリストの忘れられたワルツを弾いた。

母は出張中で不在だった。姉はすごい
形相に似合わず優しい声で風花に告げた。
母に間男がいる、今から捕まえてくる。

消防士の父は自室にこもって外国語の
勉強をしている。もう二十カ国語目くらい
になるだろうか。

自宅の車に発生したカマドウマを捕まえて
くれと風花がいうと、水槽で飼う
ヒョウモントカゲモドキの餌にしよう
と父は嬉しそうにいう。その気味の悪い
爬虫類に、父は母の名をつけている。

テレビでしか顔をみない母、誰にも通じ
ない外国語を勉強している父、音大出身で
ピアノ教師をしている奇矯な姉。

みんな才能があるから変わってても
いいんだな。
風花がそう思うように、確かに皆個性的
だけれど、愛情に包まれた家族です。

けれど、何かがずれているのです。
別の次元が混ざりこんでいるみたいな
時計の針が狂ったような違和感。

その違和感を注意深くたどっていくと
あぶりだしのように浮き上がってくる
事実。

心の中にある収束できない混沌、
乾くことのない哀しみ、それから。

いいえ、それはカラーチェであって
かなづちではありません。

(…最近の絲山秋子はよすぎる。平伏。)



忘れられたワルツ忘れられたワルツ
(2013/04/26)
絲山 秋子

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湖を好きになったのは大人になってから
です。

湖の完結している感じ。ひっそりと静かで
音がなくて。完結しているものは厳しい。

海や川は流れがあって逃がしてくれる。
湖はそうじゃない、ただ静止した美しさ
だけを提示する。時を止めてしまう。

ある程度の自信や揺らがない自分が
なければ一緒にいられないような。

湖にかかる朝靄を見下ろしながら
そんなことを考えていました。

美味しいお料理や甘いものをたくさん
食べて、楽しくおしゃべりしてゆっくり
お風呂につかって。

それでもぴたりと心が波打たないのは
湖のそばにいるからだろうな、と
思いました。

どうやら冷たくて透き通った水を
身体の中に持ち帰ってきてしまった
ようです。

聞こえてくる救急車の音も
遠くフィルターがかかっているようで。



 

 

 

 

 
間取り図をあれこれ見るのが好きです。
窓が好き、庭も、それから家具も。
衣食住で一番ウエイトが高いのは
住かもしれません。

この本は建築家、中村好文の書いた
自由な家、といった趣の本です。

家族が住む実用的な邸から、趣味の
空間である小屋まで、さまざまな家が
紹介されています。

間に住宅用語辞典がイラスト入りで
差し込まれていて楽しい。

例えばニッチ。
壁の一部を凹型にへこませて設けた棚。
これは壁に厚みがあって初めて作れる。
ああ、花瓶とかちょっと置きたい。

ピクチャー・ウィンドウ。
外部の眺めを絵のように鑑賞するために
つくられた窓。
額縁庭園のイメージですね。

この建築家が設計した家をみて
まるで大きな家具のようですね、
という感想をもらす人が多いそうです。

あたたかくて、風合いがあって
しっくり来る家。

自分の思うままの場所に、思うままの
家を建てられるなら、
ぜひ彼にオーダーしたいものです。



普段着の住宅術普段着の住宅術
(2002/04)
中村 好文

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さみしいひとに、ネコ貸します。

レンタネコという映画を観ながら、
確かに猫は効きそう、と思いました。
物言わぬ、柔らかくあたたかい生き物。

じゃあさみしさを埋められる物語は
ないかな、としばらく考えました。

村上龍のニューヨークシティマラソンとか
ちょっと長めなところだと五分後の世界。
直接さみしさを取り扱っていないものか
いいですね。
感情の矛先をスイッチするというか。

私はビジネス書を読むことが多いんです。
キャッシュフロー関連や経済系の。心理学
はNGです。感傷と対極にあるものがいい。

それでも、さみしさという巨大な
ブラックホールにはどんなに投げ込んでも
結局のところ時間稼ぎでしかありません。

日薬、ひぐすり。
この言葉が好きなんですよね。
日々を淡々と過ごすことで癒えていく
心と体。

今度こそ私はもうダメだ…
数年前にそう思いながらとぼとぼ歩いた
公園に週末立ち寄って、
大丈夫でしたー、と報告してきました。

白い花たちに、大袈裟なんだよねー、と
くすくす笑われたみたいで。



 

 

 

 

 
カフェに入って行くと、常連と思われる
男の人がオーナーと、多分婚約者との
馴れ初めについて幸せそうに話している
のが聞こえてきました。

その場に当の彼女はいなかったのですが
彼女の存在が妙にくっきりと感じられ
ました。

不在の存在感という言葉を思い出します。

存在と不在の間。
ここにいるのが存在なのか、
いないけれど感じるのは存在なのか。

例えばもう会えなくなったひとを、まるで
そばにいるかのように思い出すのは。

…開店祝いのパーティにお菓子を焼いて
持って行こうと思ってる。

友人の言葉で、ふらふらと浮遊していた
意識がテーブルの上に引き戻されました。

パーティ!キラキラした言葉です。

うんうん、いいね、と頷きながら
パーティという言葉が持つ、
かすかな虚の気配がわりと好きだな
と思っていました。



 
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花屋の前を通ると、ついふらふらと入って
しまいます。
今日は、うすピンクのガーベラを一輪
買いました。
淡い色が気分だったので。

と、ささやかな花との生活を楽しんで
いるのですが、花瓶もあまり持っておらず
もっと粋に生けたいなと思っていました。

この本は、さまざまなな花の生け方が
きれいな写真つきで紹介されています。

玄関に、キッチンに、リビングに。
高さの違う湯のみに並べて、蓋つきの
ガラス瓶に、平皿に。

素敵~とちいさくつぶやきながら
ページをめくります。

表紙はライラックの花びらを白い皿に
散らしたものなのですが、ふわっといい
香りが漂ってきそうです。

野の花を摘んでさりげなく飾る、というの
憧れます。紫や黄色や白。そして葉の緑。

著者は花の声に耳を傾けると、どんな向きで
生けたらいいかわかる、というのです。

ガーベラをしばらく見つめてみましたが
私にはまだ花の声は聞こえてこず…



いつも、花のこと。―うつわ、雑貨、古いもの。花のある暮らし。日常花がもっと楽しくなる「小さな工夫」。 (マーブルブックス)いつも、花のこと。―うつわ、雑貨、古いもの。花のある暮らし。日常花がもっと楽しくなる「小さな工夫」。 (マーブルブックス)
(2010/07)
平井 かずみ

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好きな本屋がなくなってしまいました。

先月、本を予約したときに、
今月いっぱいで閉店になりますので、
と店員にいわれたときのショックと
いったら。

駅のそばにある、ほどよい大きさの
その本屋は私のお気に入りでした。

職場のお昼休みに15分だけ立ち読み。
友達と晩ご飯の前に待ち合わせ。
飲んだ帰りにちょっとだけ。

いつだって立ち寄れる安心がありました。

その本屋で見つけたたくさんの本、
写真集、雑誌。
益田ミリ、石田千、松浦弥太郎。
クウネル、GINZA、カフェ本。

もうその書店の名前を呼ぶことは
ないんだなあ…
胸にぽっかり大きな穴があいたようです。

しばらくその跡地の前を通りかかるのを
避けていたのですが、
昨日久しぶりに通りかかったら
別の本屋が入っていました。

多分私はすぐ、新しい本屋に馴染んで
しまう。
でも今は、そうなる自分に少しの抵抗を
感じているんです。



 
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昨日からずっと、破綻やそれに続く
ある種のほころびのことを考えていたら
そういう気配をまとう短編がいくつか
浮かんできました。

ストーリーが破綻しているのではなくて
空気が、破綻しているもの。

よしもとばなな「ミイラ」
江國香織「犬小屋」
山本文緒の「プラナリア」に入っている
あのニートの…
絲山秋子の書く多くの短編も。

箱の中にきれいに整理されて
ラッピングまでされている小説を
読みたい人は誰もいない、と
どこかで聴いたのを思い出します。

ひとによってどこまでが快でどこからが
不快かはそれぞれだと思うし
その日のコンディションで受け取り方が
全然違いますよね。

今日は真四角な箱にきっちりおさまる
ような、実に整合的な一日だったので
(退屈はじりじりとひとの力を奪う)
せめて夢の中では、
天井も壁もない、手探りで進むしかない
不可思議な場所をさまよいたいものです。



 
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私はこのブログでは、本ばかり読んでいる
女のようですが、仕事もわりと好きで
毎日心身ともにベストコンディションで
働きたいと思っているんです。

そうすると一日の自由時間がちいさく
限定されて…
睡眠時間に縛られる、準備に縛られる。
破綻のない日常。

時折ねじれるようなジレンマを感じます。

ジレンマ、スガシカオの曲っぽい言葉。

代替え案として、ものすごく破綻した
媒体を摂取したくなるんです。

今日見つけたのが人間仮免中という漫画。
知ってるひとは知っているようですね。
ある女性の壮絶、それ以上の人生が
描かれているそうなんですが。

帰りがけ、TSUTAYAに立ち寄ると
園子温監督の冷たい熱帯魚とか、
裕仁天皇の太陽を手に取って
じいっと静止している自分がいます。

でもこういうの摂取したらしたで
目がぎんぎんに冴えちゃって
眠れなくなるんですよね。

困った。

棚に戻して、代わりに荻上直子監督の
レンタネコを借りる守りの火曜日。



 
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珊瑚、21歳。雪、生まれたばかり。

夫と離婚し無職の珊瑚が、不思議な魅力の
ある女性、くららと出会い、人生が急速に
動き出します。

珊瑚はくららに雪を預けてパン屋で
働きはじめますが、途中、自分のやりたい
こと、人に提供したいことに気づきます。
そして手作りのカフェを立ち上げ、
軌道に乗せていきます。

珊瑚は家庭の温かさを知らない女の子で、
世の中の普通や常識がわかりません。
なんとなく、やこれくらい、がないけれど
代わりに強いエネルギーを秘めています。

彼女は周りの大人や仕事仲間たちと時間を
過ごすことで、葛藤しながらも少しずつ
色々なことを学んでいきます。
その過程で読み手は一緒にはらはらしたり、
じんわり心が温まったりします。

物語を彩るのは
シッターであり料理の先生、くららの
滋味溢れるスープやお惣菜。
貴行や時生が作る有機農場の野菜、
土壁で塗られた静かなカフェ、
店を森のように覆う深い緑。
そしてすくすくと育つ雪の成長過程。

それではカフェ雪と珊瑚、メニューを
ご紹介します。

細切り牛肉とセロリとアスパラ、そして
松の実
アドリア海のタコサラダ
エビとブロッコリ
クミンシードとタイムのハンバーグ
アボガドとサーモンのポテトサラダ
鱈と茸の生クリーム煮
おかずケーキ(ケークドサレ)

さて、いつ行こう?



雪と珊瑚と雪と珊瑚と
(2012/04/28)
梨木 香歩

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昨日、藁の楯という映画を観てきました。

この男を殺したら10億円支払います。

対象の男は、幼女連続殺人犯で逃走中。
依頼主は、2番目に殺された少女の
祖父である大金持ちの老人です。

身の危険を感じた犯人は福岡県警に
自首します。その男を東京の警視庁まで
護送するのが主人公のSPたちの任務。
その48時間が描かれています。

10億円という懸賞金に目の色を変えた
ゾンビのような人々とSPが戦う戦闘もの
なのかなと思っていたのですが少し違って
主人公たちの繊細な心の動きを丁寧に
追っていました。

誰にも肩入れせずに観るのが面白いかも、
と全体を眺めるようにしていて思ったのが
その人の行動は、本人の常識が決めている
んだな、ということ。

10億手に入るならどんなことでもする、
気に入らなかったら鈍器で殴る、
凶悪犯でも仕事だから護送する。
短絡的なひともいれば、
迷いながらの決断するひともいる。

モラルのハードルはどのようにして
作られるのか。
人間たちのマーブル模様をみながら
そんなことを考えていました。

それと、いい悪い、敵味方、と即座に判断
してしまうと物の見方に色がつくというか
偏るんだなあと思ったり。

ニュートラルに見るって難しいですけど。



 
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定年退職した独身の男が、都会から
故郷の田舎町に越してきます。

男は昔住んでいた家のそばに部屋を決めた
ばかり。ぶらぶらと町を散歩します。

両親の菩提寺、
その向かいにあるうどんの製麺所。
道路に並ぶシロアリ駆除の大きな看板、
平屋建ての巨大なスーパー。
昔と変わった風景と変わらない風景と。

思い出の中にある映像と今の風景を
二重写しにするように、男はひとり
眺めていきます。

その中に混じりこむのは
多分少年だった頃に男が飽くことなく
見つめ、胸に刻まれた風景。

道の先に見える海。
いつも見上げていた水色の給水塔…

川端康成文学賞を受賞したこの短編、
淡々と続く描写はどこに行き着くのだろう
と思いながら、いつのまにか私も
男と同じ風景をみていました。
クロスバイクに乗って走る速度で。

読み終わってからしばらくうずくまって
動けませんでした。
私にも帰りたい風景があることを
ぎゅっとリアルに知ったからなのかも
しれません。

胸の中の空が一段明るくなった感じがして
その余韻を長く味わいました。

素晴らしいという褒め言葉は、
きっとこういう小説のためにある。
そう強く、思ったんです。



新潮 2013年 06月号 [雑誌]新潮 2013年 06月号 [雑誌]
(2013/05/07)
不明

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いずれ本になったらいいな、と
楽しみにしている日記があります。

よしもとばなな公式サイト
掲載されている毎月の日記なのですが、
日々を豊かに生きるためのコツが
濃密に書かれています。

毎回、様々な話題に触れているのですが
確信を突かれてどきっとすることや、
なんとなく肌身で知っているようなことが
きちんと言語化されていて、
深く納得することも。

読んでいると自分がどこにいるか
わからなくなるのです。
世界がすっと遠のくみたいに。
それくらい吸引力がある日記には
出会ったことがないかもしれません。
(さっきも地下鉄を乗り過ごしそうに…)

目を閉じて心地よい風を感じたり
咲き始めた薔薇の艶かしさにはっとしたり
大事なひとの笑顔をじんわり味わったり。

ゆったりと構えて、間を大事にして
丁寧に日々を過ごしたいな。

そんなふうに思わせてくれるんですよね。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

よしもとばなな公式サイト
→日記
 バックナンバーも読めますよ。



 
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旅先で立ち寄る図書館が好きです。

広尾で降り、新緑の有栖川宮記念公園を
抜けて、青いイチョウの葉の天井を
くぐると、ひっそりと図書館があります。

読みたい本は三階にありました。
緑が見える窓辺の席につきます。

紙をぱら、とめくる音が意外に大きく
感じられて驚きます。
こんなにひとが集まる場所で、音楽が
流れていないのは図書館くらいなのかも
と思いながら。

少し疲れたら五階のカフェテリアに行って
お茶をのみ、窓の外をみて(空が広い)
また戻って本を読み。

あっという間に5時間経過です。
2冊しか読めなかった…

森の中の静かな図書館、理想です。

そういえば村上春樹の海辺のカフカでも
雰囲気のある図書館が出てきたな。



 

 

 

 

 
これから楽しみに読まれる方も多いと
思うので、内容にはさわりだけ触れ、
プレ版としてお送りします。

主人公の多崎つくるが、過去に起こった
大きな出来事、その傷に向かいあう。
そして真相を紐解いていく物語です。

読み始めてほどなくして、丁寧に紡がれた
物語にすうっと引き込まれていきます。

文章を追いながら、細胞が歓喜に包まれて
いくのがはっきりとわかるのです。

例えば自分を快適にする全てのもの、
天井の高い部屋も緑が見える窓も
座り心地のよいソファも温かいお茶も
肌ごこちのいいブランケットも、
何もいらない。

埃っぽい体育倉庫の跳び箱とマットの
隙間で読んでいても全然構わない。
この一冊の本さえあれば。

そのくらいこの物語に入っていくのは
深く、豊かで温かく、神秘的な体験
でした。

普通に暮らしていると存在すら気づく
ことのない、心の奥底に湧き出る泉。
その透明な水をそっと両手で掬うような。

心の中の領域というのは、自分が思うより
ずっと広大で、もちろん意識の外側にある
ものも存在する。
その小宇宙を、多崎つくると一緒に
旅をしたようでした。

作中に出てくる音楽を小さく流しながら
読みましたが、物語にぴったりと
寄り添うようで、とても心地いいですよ。



色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(2013/04/12)
村上 春樹

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しばらく梨木香歩の本を読んでいると
起こる現象があります。
森に入りたい…という強い欲求です。

ちょうどお休みということもあり
一日一回あちこちで森林浴をしています。
今日は、横浜の元町を散歩しながら
山側の公園を巡りました。

私は公園というのは平地につくるものだと
思い込んでいたのですが、
元町公園は山の傾斜ごと公園になっており
なんて斬新、と胸が震えました。

木立の中からプールが見えました。
物語の予感がする風景です。

例えば恩田陸の書くミステリーなら、
真夜中に殺人事件が起こるかもしれない。
江國香織が書くラブストーリーなら、
ふたりが待ち合わせをするかもしれない。

今、私が一番読みたいのは
偶然居合わせた他人のふたりが、
プールを眺めながら他愛のない話を
延々としてそのまま別れる、
というものです。
川上弘美あたりが書いてくれそうな。

私が実際出会ったのは、一匹の大きな
トラ猫でした。
私はいつものあいさつをしましたが
彼女はちら、と私をみて、森の中に
消えていきました。



 

 

 

 

 
f植物園に赴任した園長である主人公は
ずっと放置していた奥歯の痛みの
治療に通いだしますが、それから
奇妙な世界を見るようになります。

たとえば、歯科医を手伝う奥さんの
顔が犬にかわっているのに気づいたり
大家の女性が雌鶏の頭に見えたり。

どうやらこのf郷では前世の姿が
見えることがあるらしいのです。

園の敷地内に、水生植物園、隠り江を
作らなくてはならない。
湿地に水の流れを呼びこまなくては
ならない。

天命を受けたようにつき動かされる
園長は、一方で過去に心を強く
引き戻されていきます。

若くして亡くなった妻のこと、
生まれるはずだった子供のこと、
もっとずっと前の、自分が子供だった頃…

深い森の中にいるような心地になります。
犬雁足、白木蓮、椋の木。
さまざまな植物の名前が出てくるたびに
画像を検索して読み進めるのも楽しい。

現実とずれた世界が交錯するので
あれ、あれっ?
と戻って読み返したりするうちに
梨木果歩の作り出す世界に
すっぽりと入り込んでいきます。

物語を追って理解するというより
身をひたすようにして読む楽しみ方を
久しぶりにした気がします。

とてもとても、
遠くまで行った気持ちになれますよ。



f植物園の巣穴 (朝日文庫)f植物園の巣穴 (朝日文庫)
(2012/06/07)
梨木 香歩

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ある家族の物語です。
母、父親の違う息子ふたり、その妻、
恋人、それから母の妹。

ばらばらになってしまった関係、
まだ始まったばかりの関係。
それぞれの想いがあてどなく彷徨います。

怖れと、干渉と、執着と、諦めと、
愛情と、憎しみと。

物語の途中から途中までを読んだような、
落着点のない、ひどく宙ぶらりんな気分
になるのですが、そこがかえって
著者の筆力を感じさせます。

何かが著しく解決するわけでもなく
誰かの夢が叶うわけでもない。
あけすけなくらい、脚色なしの日常。

仕事で成功を収めなくてはならない、
家族皆で笑っていなくてはならない、
何かに到達しなければならない。

世間的な幸せのモデルとして提示されて
いるもの。

それを目指すも目指さないも本人の自由で
ひとのことは放っておけばいい。

みんな自分の持つ鉛をうまく飼い馴らし
ながら生きていく。
急にごとりと動き出さないように、
今日も、明日も。

音のない長回しの映像をじっと見ている
ような、
でも全然飽きさせない一冊です。



ちょうちんそでちょうちんそで
(2013/01/31)
江國 香織

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物事を抽象的に考えるススメ、の本です。

抽象的思考とは、物事を高い視点から見て
本質を抜き出して考える手法です。
具体的とは反意語であり、客観的とは
異なります。

例えば常識や情報をうのみにせず
まずはぼんやりと全貌を眺めてみる。
そもそもの前提から疑ってみる。

具体的思考が近視的なら、抽象的思考は
遠視的なイメージです。

なんか、違和感あるな
でも理由はよくわからない…
今判断するのは保留にしよう、ということ
が私にはよくあって、一旦思考の海に
どぼんと沈めておくのですが
そういったことが理論的に書かれた本を
読むのは初めての経験でした。

言語化されていることへの感動。

ドキッとしたのはこんな一文。
これ以上考えたくない、という生理的欲求
から、人は判断を急ぐことがある…

この本を読んで、私は自分の思考が
途中から混沌としてくる理由がわかったり
ずっと思っていたけど誰にも言わなかった
ことがたくさん書いてあったりで、
楽しくて楽しくて仕方なかったです。
一気読みの充実感。

頭の中に自由な思考の庭がほしいですか?

もしそうでしたら、ぜひこの一冊を。



人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)
(2013/03/15)
森 博嗣

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旅先は寺社仏閣のある場所を選ぶことが
多いのですが、中でもとりわけ好きなのは
丹精こめて作り上げられた庭です。

古の人々が美に対する繊細な感性を
庭に映し出す。その芸術。
豊潤なものに、きめ細やかに満たされる
ような気持ちになります。

そして寺や神社は物語を持っています。
お堂の中をめぐりながら、心の中で
ひっそり思いを馳せるのも楽しい。

先日訪れた深大寺では、
なんじゃもんじゃの木が白い紙吹雪の
ような花を満開に咲かせていました。

深大寺の歴史は平安時代に遡ります。
天台の法流を組み、東国一の密教道場
であったそうです。

きれいな仏様のお顔を拝み、橋の上から
庭を見下ろしました。

水面に映り込んだ樹々の新緑。
高い位置にしつらえられた竹筒から
池に向かってまっすぐ落ちる水。
ひたひたと静かに広がっていく水紋。

身体中の細胞が徐々に正円に戻っていく。
透明度が増していく。

これをひとは浄化と呼ぶのですね。



 

 

 

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