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たまにこういう日が来る。
定期便みたいに。

すべてが灰色にけぶっていて、
手にとれそうな距離なのに、つと手を
伸ばすと届かないような。

こんな日だから念入りにメイクをして、
ワンピースにきちんとアイロンを当てて
赤いヒールの靴をはいて出かけたけれど
食事をしていても、お茶を飲んでいても
身近なはずのひとがいつもより遠い。

会話が、自分が求めているものと
ほんの少しずれる。
そのずれは膜のように相手と私を隔てる。
霧雨に降りこめられていくみたいに。

全部のコインが裏面にひっくり返って
しまったような夜は、クッションの上で
くたりと無抵抗でいるしかない。

そうしながらも、頭の片隅で想像する。

風が吹いて、コインが浮き上がる瞬間に
ぱしっと手のひらで返す自分の姿を。



 
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スタバにつくと窓から外が見える席に座り
まずはテーブルの上に手帳とiPhoneと
本と英語のテキストを出します。
さて何をやろうかな、気が向くままに。

本やテキストに全く手をつけず
ネットの青空文庫で太宰治の斜陽を
ずっと読んでいたりもします。

今、かず子がたった一度だけ会ったことの
ある妻子持ちの男に、どうか私をお妾に
してくださいと熱烈なラブレターを三度
送ったところで、
時代背景が違いすぎるせいか
理解不能で頭が白く霞んでいます。

顔をあげると隣のひとが熱心に勉強して
いたり、外国語の静かなおしゃべりが
聞こえてきて、ああスタバだ、ここは
と意識が現実に戻ってきます。

バナナウォールナッツマフィンを初めて
食べました。甘い。アメリカの甘さ。
バナナを練りこんだ粉ものって好きです。

没落していく貴族たちが抱える虚無感が
カスタードにくるまれてふっと消えた。

ようやくテーブルの上のテキストを開き、
iPhoneにイヤホンを差し込む。

Listen,
聞き慣れた声が流れてくる。



 
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Twitterで流れてきた、
女の女装、という言葉にぱっと目が
止まりました。

そこには、社会の中で女性が自らを
客体化する…とありました。
わかるなあ。

男性社会の中で働いていると、
人間としての部分と、女性としての部分の
比重を緻密に調整する術が
感覚として身についてくるなあ、と
思います。

細い平均台を目をつぶって歩くみたいに。

それが上手くいっているかは周りに
聞いてみないとわからないですが…

仕事の日は、女らしい服装でいることが
多いのですが、
それはある種の緩衝材となっているのかも
しれません。
わりとはっきり主張してしまう質なので。

このお題、つきつめると難しい領域に
突入しそうですが
その場の空気を読んでバランスがとれる
っていうのが一番なんだろうなと
私は思っています。

そのためには
気配ごとひとの話を聞くのが大事。
言葉よりも声色や態度を。
余裕がないときは難しいんですけどね。

明日も慌ただしい一日になりそうです。



 

 

 

 

 
目線の先で、緑色のハサミがさっと
動きました。

何が起こったのか認識するまで3秒。

…今、前髪切りました?と尋ねると
一本だけ長いのがあって邪魔だったの
とにっこり笑う向かいの女性。

目の前で誰かが高速で前髪を切るのを
初めて見ました。

先日、ある心理学のセミナーを受講した
とき、講師の方が話していました。

ひとに笑顔の印象を与えたいけれど
笑えない日もある。では、笑っている
ように見える表情はないか?
それはアイドルがよくやっている。
前歯を見せれば笑っているように見える。

ええっそうなの、前歯だけで。
知らなかった…

初めて見聞きすることは、新鮮な驚きに
満ちていて面白い。
役に立つことも、そうじゃないことも。

私の撮った額紫陽花の写真を見て、
ドットがかわいい!といった友人。

紫陽花の蕾をドット?
なんて斬新。
まじまじと写真を見入ってしまう。



 

 

 

 

 
ある小説家が亡くなったというニュースを
読んだ主人公の私は、バイトを休んだ。

人々の心に残る多くの作品を残した
とても人気のある小説家だった。
雨宮くんが教えてくれた。高校生の頃だ。

私たちはよく、あまり手入れされていない
ただ広いだけのひなびた植物園を歩いた。
たくさんの話をした。
枯れた葉や、赤ピンクの花を見ながら。

もし、その小説家が亡くなったら
そのとき僕たちがどこにいても、
植物園の前で会おう。彼はそう言った。

もし彼が14年前の約束を憶えていたら。
私は日曜日を待って、電車に乗り
植物園に向かう…

あてどない場所にいるような
さみしい、よりも少し手前の気持ち。
その雲の中にすっぽり入ってしまって
しばらくぼんやりしてしまいました。

恋愛においての約束はロマンチックだけど
とても難しい。

約束はそのときの自分がしたもので、
そのときの自分がもういなければ
無効なのか、
それとも約束だけが生きるのか。

もし私が約束するなら、
待ち合わせは月にするけれど。
どこまでも非現実的に、夜の夢みたいに。

戯言には戯言にふさわしい質量で。



愛の夢とか愛の夢とか
(2013/03/29)
川上 未映子

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シングルペアレントになってしまった
主人公の男は、幼稚園児の息子と
二人暮らし。

妻のゆずこが亡くなって一年になる。

ゆずこは出張先の北海道で突然死した。
そのとき彼女はホテルで男と一緒にいた。

文房具店に勤めながら、夜はお迎え、
晩ご飯を作り明日の準備をして寝かしつけ
朝ご飯を作って家を出る。
息子とふたり、慌ただしくも楽しい日々。

冷蔵庫の中に遺された妻の形見、
彼女が週末にまとめて作って冷凍した
沢山のお惣菜を時折眺めながら…

突然大事なひとを失う。それだけで
大変な衝撃であるのに
そこで愛人がいたことが発覚する。

愛情と憎悪は水と油のようで
ぼわぼわと入り交じったまま
溶け合わせることができない。
彼の中では妻が死んでいない。

死んでいない妻を思い出すことは辛い。

彼はなんとかして消化しようとする
のですが、ぎりぎりのところで
荒みきらない彼の品のよさが
読み手に清涼感を与えます。

冷蔵庫の形見を、一品ずつ食べ始める。

人はなんとかするんだな、どんなに
きつくても、そこから出ようとする。

それが生きていくってことなのかも
しれない。



文藝 2013年 08月号 [雑誌]文藝 2013年 08月号 [雑誌]
(2013/07/05)
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猿と鮭はよく干され、職人に太い木綿糸で
縫われる。それは渋柿の壺に漬けられて、
乾くまで天井から吊るされる。

徐々に糸は目立たなくなり、
それは猿と鮭であった頃の記憶を忘れ
人魚の自覚を持ち始める。

完成した干物の人魚たちは桐箱に詰め
られ
遠く西の国へ向けて船で運ばれる。
不老不死の薬として。

干物の人魚たちは波に揺られながら
海に住む生きた人魚に宛てて
音のない歌を歌う。

生きた人魚も干物の人魚も、同じイメージ
を共有している。
生きた人魚たちは歌に共鳴し
大きなひとつの塊となって船を襲う。

海に落ちた干物の人魚に水が染み込む。
やがて螺鈿のような鱗を取り戻し、
つるりと生き返る…

印象的なストーリーです。

一斉に音のない歌を歌う、個体を超えて
ひとつのイメージを共有するなんて
すごくいい。(うっとり)
私もその歌が聴こえるといいのに。

この物語は一匹のできそこないの人魚の
半生が描かれています。
我は誰なのか。人魚は問い続けます。

以前は、意識がすべてを統制していて
それが行動や自我をつくると思って
いたんですよね。

でも、最近はそれだけじゃないなと。
脳や意識が支配できるものは実はわずかで
手足から、行動から影響を受けるものは
意外なほど大きい。

短い物語ですが、とろけるほど美しい
寓話とアイデンティティの作られかたが
ミルフィーユみたいに重なって
読み手の心を贅沢にかき乱すのです。



群像 2013年 08月号 [雑誌]群像 2013年 08月号 [雑誌]
(2013/07/05)
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僕の彼女のマンションは、駅から
徒歩25分の、暗い道のりの先にある。

彼女のうちに遊びにいくときのお土産は
決まっている。
ニュージーランド産の、500グラムで
13000円もする高級蜂蜜の瓶。
彼女の大のお気に入り。

美しくお洒落で申し分なく素敵な彼女は
いつも紅茶に蜂蜜を垂らして飲む。

道すがら、僕はたまに通り魔をする。
蜂蜜の瓶を、お店の紙袋からコンビニの
ビニール袋に入れ替えて。

だって、逃げろ!と声がするから。
僕は背後から見えない暗殺者に追いかけ
られているから。
捕まるわけにいかない、全速力で逃げる
しかないだろう?

主人公の独白で物語は始まります。
ほどなくしてこの男は狂っているんだと
わかるのですが、
そんなとき、一度深呼吸をします。
固唾を飲んで見守る態勢を整えるために。

男の行動には本人なりの秩序と法則があり
冷静とすら感じるのですが
ひとの頭を殴った蜂蜜の瓶を彼女に贈る、
おとなしく溶け込んだ狂気が逆に怖い。

彼女のことは大事に思っているんだな、
でも他人はただの獲物なんだな、
この境目の断絶は何だろうと考えて
いました。

常識が体に染みていない?
正義や善悪の概念が欠落している?

物語の最後に起こるシーンは
いいようのない金色の気配に満ちていて
強く胸を揺さぶられるのです。

愛と畏怖と後悔と解放と涙と無垢と。



群像 2013年 08月号 [雑誌]群像 2013年 08月号 [雑誌]
(2013/07/05)
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猿と鮭を縫い合わせてできた人魚の
アイデンティティについて書こうと
思っていたんです。
藤野可織が描くシュールがすごく好みで。

でもちょっと寄り道。
そもそもアイデンティティってなに?

ウィキペディア先生によると、
自己同一性。自分は何者であり、何を
なすべきかという個人の心の中に保持
される概念。

今日の話です。

午後、大きなプロジェクトの仕事で
私の対応もれを同僚が発見しました。
まさか、ざっと血の気が引いた私。
大慌てで対応に追われ、方々に謝っては
お願いし、なんとか今日できるところまで
は最速でやりましたが。

当たり前のことを当たり前にできなかった
自分にガッカリするわ、迷惑をかけた
同僚が優しくてさらに申し訳ないわで…

そんな気分の残業中に、別の同僚と
コンビニに夜食を買いにいきました。
職場の席に戻り、すき焼き丼の蓋を開けた
彼のひとこと。
まさかの。

レンジであっためすぎて玉子がカチカチに
固くなってるんですけど!

向かいで大笑いしながら、
明日も一生懸命やろう、と思ったんです。

アイデンティティなんてものはきっと
後から形作られる。



 

 

 

 

 
ある小さな町。ハム屋の旦那が亡くなった
知らせを妻から聞く男。

男は仕事の依頼がないイラストレーター。
もしもミックジャガーなら、通夜には
行かずにハム屋の歌を書くだろうな、
と彼は思う。

久しぶりに喫茶店で待ち合わせた
元彼女からは、彼女を撮った写真のネガと
貸した金17万を返せと言われる。

それを5万に値切るつもりで、一度家に
戻って妻に金を借り、再び待ち合わせ場所
に向かう途中で、路上ライブで歌っている
女の前で足を止める。
結局待ち合わせに行かずその女と飲みに
いき、よせばいいのに口が勝手に
口説き始める…

井上荒野は軟体動物みたいな男を書くのか
本当に上手いなあ、と思います。
深い思考も洞察もなく、反射と愛嬌だけを
持ち合わせてふらふら生息するような。

ふまじめでいいかげん、風の吹くまま。
周りの人々は彼にほとほとあきれている
けれど、死ぬほど憎まれるわけでもなく。
何故か彼の妻や子供たちは皆、びしっと
しっかり者だったりするのです。

それも自由のうちなのかな、としばらく
考えていました。
あらゆるものから逃げる術に長けて
いるのは。
誰にも捕まらず、責任も追わず。

(追っ手がある以上自由ではないな…
ひとり納得。)

どうぞ逃げ切れるならいっそそのまま。

もし私が彼と町で出くわしたなら、
ジャンプして飛び越えさせていただき
ますけれど。
ハードル跳びの要領で。



文学界 2013年 08月号 [雑誌]文学界 2013年 08月号 [雑誌]
(2013/07/05)
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おみそ汁の具、なにが好きですか?

私は小松菜、茄子、大根、牛蒡…
シンプルにお豆腐と長葱も。

いつも朝ごはんが和食なので、おみそ汁は
マストなのですが、本気で栄養をとる
ための野菜スープとして作るので、
これでもかの具だくさん。

今回の特集「わが家のみそ汁」を
じっくり眺めたところなのですが、
上品なおみそ汁にうっとりです。

白身魚の昆布じめみそ汁?なんて贅沢。
絹さやとざっくり大きく掬ったお豆腐の
みそ汁もきれいです。

夏だかは茗荷や青紫蘇をたっぷり刻んで
乗せた冷汁もいいなあ。

…と選んだものは全部赤みそ。
最近淡色みそばかりだったもので。

京都を初めてひとりで旅した冬に、
祇園のおばんざい屋さんで締めに飲んだ
赤だしのみそ汁はとっても美味しかった。
あのときは確か敗戦の予感がする恋を
していて…

相手のことはおぼろげなのに
おみそ汁の味はくっきりと思い出せる。

この雑誌をぱらぱらとめくっていると、
心があちこちをさまようのです。
ふわんと心地よく、全部が楽しかった
夢みたいに。



暮しの手帖 2013年 06月号 [雑誌]暮しの手帖 2013年 06月号 [雑誌]
(2013/05/25)
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予定のない金曜日、茄子紺色のワンピース
に黒のピンヒールで仕事に行ったら
夕方、ちょうど会いたかったひとのいる
席にお誘いがかかったので、
お刺身の美味しいお店にいきました。

たまに実験するんです。
用事がない日に、いつもよりきちんとした
身なりをして出かけてみる。
するとそれにふさわしい何かが入って
くる。

そういえばこれは、しばらく前に読んだ
ザ・シークレットの実践かもしれません。
あの本で思考への焦点の当て方を知ったな
と思い出します。

もちろん何も入ってこない日もあるので
そういうときはひとりで出かけます、笑

今週は夏の社交週間につき、活字離れ
していました。
本を置いてビアジョッキを傾ける。

連日暑いので森の散策も少し減って
いますが、気になるのは紫陽花の成長。
ということで昨日さくっと撮った一枚。

もうすぐ満開かな、楽しみです。



 
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今夜はビアガーデン日和。

きんきんに冷えた生ビールを飲んで、
お肉をどんどん焼いて。
空がうす青色から群青色に変わっていく。

友達の幸せな話をたくさんきいて
ほっこりした気分なのです。

まだ恋が始まったばかりだったり、
ディープに愛されていたり、
ゆるやかに関係を温めていたり。

ある友人は彼に言われたそうです。

あなたの僕に対する心遣いは点だ。
線じゃない。

ずいぶんせつないじゃないですか。

点でも、それをきれいに繋げれば
線になると思うんです。
星と星を結んで星座になるように。

夏の夜はどこまでも続いていて
終わらない気がする。
ノースリーの肌に馴染む漆黒。

清少納言が徒然草で語っていました。

夏は夜がことのほか、いい。



 

 

 

 

 
ぞうげ色で、あんがいひんやりしている。
とげとげのない金平糖のような形。
てのひらに握りこめるくらい。

きぬさんの中にある「女」というもの。

衣世(きぬよ)さんはその昔、
恋人だった彼の弟、丹二さんと
相思相愛になってしまいます。

ふたりの関係はすぐに気づかれて
衣世さんは彼に詫び、別れてほしいと
いいます。弟とも二度と会わないなら、
というのが承諾の条件でした。
その後一年経たぬうちに、彼は
釣りの事故で亡くなってしまうのです。

毎年五月、衣世さんは京都まで彼の
お墓参りにいきます。
丹二さんと会うのはそのときだけ。
夕暮れまでの間、お茶を飲み、
淡々と哲学の道を散歩をする。
自分が「女」ということを上手に忘れて。

今年は17回忌だよ、丹二さんはいう…

時間が痛みを消すこと許可しないふたり。
でも、そこには確かに縁があって
消し込み不能なくらい太い糸だったら。

すべての許可は、自分の中にあるもの
なんだなと思いました。
誰かを好きになるという許可。
誰かと共に幸せになるという許可。

以前、どこかのカフェで読んで涙ぐみ、
ずっと忘れられなかったのですが
今日また偶然巡り会って。

大人の、辛い恋を摂取したい方に
そっと両手で差し出したい物語です。



ku:nel (クウネル) 2010年 07月号 [雑誌]ku:nel (クウネル) 2010年 07月号 [雑誌]
(2010/05/20)
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七夕ですね。

一昨年の今日。
ショッピングモールを歩いていたら
大きな笹が飾られていました。
子供たちに紛れて丁寧な字で願い事を
短冊にしたため、そっと吊るしました。

その願いは一年を待たず叶いました。
今はもう手放してしまったけれど。

去年の今日。
七夕に何を願ったか思い出してみました。

その願いは叶っていませんでしたが、
今はもうそれが願いではなくなっている
と気づきました。

どちらが楽しい気持ちになるかというと
後者のほうかもしれません。

ひとは日々変化する生き物なので、
それに合わせて願いも少しずつ変わって
いくものだと思っています。

もちろん願いが叶うのは嬉しいのだけど、
一年間それだけを強く願ってきた自分って
ちょっと退屈だな、と。

それでも、今年も願い事はするのです。

天の川を見上げるのは、神社のお参りと
似ています。
手を合わせて目を閉じた瞬間、
今の自分の核となる祈りが言語化される。

ぽん、と出てきた言葉を自分で聞いて
そうなんだね~と納得したりもします。

そして、来年の私がどこにいて、一年前の
私をどんなふうにみつめるのか。

さて、そろそろ夜が降りてくる頃です。



 
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その昔、順徳天皇が佐渡に流されたとき
この花を見ると都への思いを忘れられると
愛でていた、という言い伝えがあります。

ミヤコワスレ。

花の名を初めて聞いたとき、
まだその姿を知らなかったけれど
あらゆる花の名の中で一番胸を打つと
思いました。

花の姿を初めてみたとき、
ふっと頭に浮かんだのは
なんらかの事情で生息地を里にうつす
ことになった花が
遠くの都を想っている情景でした。

風をうけて、紫の花びらを揺らしながら。

花屋の店先で、林の中で、
この花に出会うと私は尋ねるのです。

あなたはもう都を忘れたのか。



 

 

 

 

 
この作家は工場、という小説で話題に
なっていて、気になっていたんです。

主人公は四十を少し過ぎた男。不妊治療中
の同い年の妻と二人暮らしです。

ふとしたきっかけで旧友の斉木と連絡を
取り合うようになり、
新婚で田舎に一戸建てを構えたばかりの
斉木の家に招かれ、妻と遊びに行きます。

斉木の目下の悩みは、古い家を改築した
せいか、屋根裏にいたちが出ること。

斉木の若妻が用意した、甘い味噌仕立ての
猪鍋をつつきながら酒を飲み、
話題は斉木家のいたち駆除の話へ。

ほろ酔いで、どちらかというと聞き役
だった主人公の妻が突然、子供の頃に
自宅に現れたいたちの話を始めて…

今、いたちの写真をみてきました。
ちょっと苦手です。でも、ぐっと臨場感。

作家には文章に魔法をかけて力を持たせる
ひとが多くいますが、
この作家は硬質なコーティングだなと
感じます。
知らないで読んでいたら男の人と勘違い
するかもしれません。

確かで、豊潤な小説という印象です。

なによりいたち駆除という不思議な題目で
ここにあったはずの気持ちを根こそぎ
遠くまで持っていかれたことに驚き、
もう一度頭から読み返してしまいました。

ああ、言いたい。
でもこれは小説の肝の部分。

いたちが自宅に出ないようにする
方法はね…



新潮 2013年 07月号 [雑誌]新潮 2013年 07月号 [雑誌]
(2013/06/07)
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ラ、という音は哀しい。

子供の頃に鍵盤を習っていたときの記憶。
もしかすると、それよりもっと前に
深く胸に刻まれたトーン。

急に思い出したのは、
色彩を持たない多崎つくる~に登場する、
主人公の高校時代の友人、アカのことを
思い出していたからです。

アカはある特殊な人材育成のビジネスを
立ち上げ、三十代半ばにして
有名な青年実業家となります。

つくるが会いにいく友人とのシーンの中で
アカとの再会のシーンだけが妙に頭に
ひっかかり、10回くらい読み直して
いるのですが、
今まで理由がわからなかったのです。

並外れた聡明さと独特の繊細さ。
色々やってみないと自分に何が向いて
いるかなんてわからない、という考え方。
(もちろん頭で考えているだけではなく
実践もする)
孤独を正しい質量で捉えているところ。

彼の内側からは、
ラ、の音が聴こえてくる。
調律のときみたいな、一定のテンポで。

そういえば私はいつも、
出会うひとの中に、物語の中に
ラ、の音を探しているのかもしれない。

自分が恐竜だった頃に、長い首を伸ばして
青く高い空を見上げたときのような
気持ちで。



 

 

 

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