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いつのまにかしっくりと馴染んで、気持ちを
言葉で確かめ合うこともなく、ただ静かに
暮らし続けた相手を突然失うというのは
どれほどのことなのだろう。

主人公の果穂は、十年前につきあっていた
オサムの噂を友人のリッキーから聞く。

果穂とオサムはバイト先の西新宿のバーで
知り合って二年ばかりつきあっていたが
彼は突然失踪したのだ。

池袋のロマンス通りにある回転寿司屋の
厨房にいるらしいよ。

果穂は翌日の午後に寿司屋を訪れ、昔と
変わらぬ姿の彼をそこに見つける。
夜にまた来てくれる、上がれるから。
オサムはそう果穂に告げる。

果穂は広告代理店に勤め、グラフィック
デザイナーの昇と穏やかに暮らしている。
昇は果穂と出会った三年前から才能を開花
させ今は売れっ子だ。

一方で果穂はこの十年の間オサムの消息を
聞くたびにその地に赴き何日もかけて探し
まわった。オサムへの説明のつかない
気持ちを胸に、 果穂は指定された時間に
再び寿司屋を訪れる…

どうして自分の前から煙のようにいなく
なったのか、どうして自分はこのゆらゆら
と漂うように生きている二十も歳上の男に
とらわれ続けているのか。

その理由が持つ色彩は同じトーンだ。

育った環境も身を置く場所も全然違う、
けれど体の中に同じ音楽が流れるひと。

ふたりとも誰かを好きになると落ち込ん
じゃうタイプじゃない、
自分の相手への気持ちを信じきれないって
いうか。
リッキーの言葉が川面に浮かびあがって
は沈む。

もしかしてそういうひとと一緒にいるのは
少し哀しいことかもしれない。
それでも。



愛なんて嘘愛なんて嘘
(2014/08/22)
白石 一文

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Comment

 

涼虫さま

随分お久しぶりです。

今回の小説のあらすじを読んで、何となく昔の事を語りたくなりました。
この小説のような空白の時間はまったくありませんでしたが、私は以前15年歳が離れた人と約15年間恋愛をしていました。

でもつきあい始めた最初から、彼に「子供を捨てられないから離婚はできない」と言われていました。
初めの頃は確かにそれが辛かったけれど、彼は本当に心から私を愛してくれていました。
そして私も、彼の前では自分が自分でいられるある事が何よりも不思議で嬉しかった。

15年の間で私は5年間鬱を煩いましたが、彼はぴたりと私の側を離れずにいてくれました。友人も家族も見放したというのに。

そしてもうその頃から彼は私の空気と成り、かわす言葉がなくても、ただそこにいるだけでよかった。
揺るぐ事のない愛情でお互いに結ばれていると感じていました。このままずっとこれが続くのだ、と。

仕事で会えないとき以外は毎晩11時まで一緒にいました。土日祝日以外は。

その後職場の状況が変わり私は引っ越しをしましたが、彼は何事もなかったかのように毎日決まった時間に私の部屋に来て、決まった時間に駅前で1,2杯の赤ワインを一緒に飲んで、「じゃあね」といって帰っていきました。

最後に「じゃあね」と言ったのは金曜日でした。
その頃、とある事情で私からはメールも電話もする事ができませんんでした。

月曜日、連絡もなく、彼はやってきませんでした。
翌日友人から、彼が突然死した事を聞かされました。
当然ながらお通夜にも告別式にもいけなかったし、行く気力もありませんでした。

それから三年後、私はアルコール依存で歩行困難になり入院しました。
ただ、あの金曜日以降からの記憶がほとんどありません。死の知らせを聞いて一晩中泣きはらし、人前に出られないくらい目が腫れた事は覚えているけど、それから後の事を思い出そうとしてもまったく思い出せない。

退院して初めて、これまでと違う現実の中で生活し始めたように思えます。
今は彼の不在の中にあっても、私は私だけで呼吸し、彼といた時よりもっと私らしく生きているように思えます。

涼虫さんの文章を読み、ふと彼の記憶が蘇り、これを書きながら涙を流せている事が、なんだかやけに嬉しいです。

彼といた時間の記憶しかない事は、もしかしたらとても幸せなのかもしれないと感じています。

なんだかちょっと変かも知れませんが、
ありがとうございます。

名前:maruta | 2014.09.20(土) 22:38 | URL | [Edit]

 

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名前: | 2014.09.29(月) 06:32 | | [Edit]

 

Re:

素敵な宝物のような思い出を語ってくださり、
ありがとうございます。
とてもとても、嬉しかったです。

名前:涼虫 | 2014.10.18(土) 08:51 | URL | [Edit]

 

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